April 29, 2021 Vol. 384 No. 17
小児高悪性度神経膠腫に対する腫瘍溶解性ウイルス HSV-1 G207 による免疫ウイルス療法
Oncolytic HSV-1 G207 Immunovirotherapy for Pediatric High-Grade Gliomas
G.K. Friedman and Others
再発または進行性の高悪性度神経膠腫を有する小児・思春期児の転帰は不良であり,これまでに報告されている全生存期間の中央値は 5.6 ヵ月である.小児高悪性度神経膠腫は,多くが免疫療法が無効な,すなわち cold な腫瘍であり,腫瘍浸潤リンパ球がほとんどみられない.前臨床研究では,正常脳組織での複製に不可欠な遺伝子を欠失させた遺伝子組換え単純ヘルペスウイルス 1 型(HSV-1)G207 を用いた腫瘍溶解性ウイルス療法に対して,小児の脳腫瘍は高い感受性を示している.
生検で再発または進行性のテント上脳腫瘍が確認された小児・思春期児を対象に,3+3 デザインを用いて 4 つの用量コホートで G207 の第 1 相試験を行った.患児に,最大 4 本の腫瘍内カテーテルを定位留置した.翌日,G207(107 または 108 プラーク形成単位)を,注入速度を調節して 6 時間かけて投与した.コホート 3 とコホート 4 には,G207 の投与後 24 時間以内に,肉眼的腫瘍体積に対して放射線照射(5 Gy)を行った.唾液,結膜,血液からのウイルス排出を,培養とポリメラーゼ連鎖反応検査により評価した.治療の前後で組織検体をマッチさせ,免疫組織学的解析により腫瘍浸潤リンパ球を調べた.
高悪性度神経膠腫を有する 7~18 歳の患児 12 例に G207を投与した.試験担当医師が G207 に起因すると判断した用量制限毒性や重篤な有害事象はなかった.グレード 1 の有害事象 20 件が,G207 に関連する可能性があると判断された.ウイルスの排出は確認されなかった.11 例に,放射線学的効果,神経病理学的効果,臨床効果のいずれかが認められた.全生存期間の中央値は 12.2 ヵ月(95%信頼区間 8.0~16.4)であり,2020 年 6 月 5 日時点で,11 例中 4 例が G207 の投与から 18 ヵ月後も生存していた.G207 により腫瘍浸潤リンパ球数は著明に増加した.
再発または進行性の小児高悪性度神経膠腫の患児において,G207 の腫瘍内投与は単独でも放射線療法との併用でも,忍容可能な有害事象プロファイルを示し,効果を示す所見が認められた.G207 は免疫学的に cold な腫瘍を hot な腫瘍に変換した.(米国食品医薬品局ほかから支援を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02457845)