Covid-19 ワクチン Ad26.COV2.S の第 1・2a 相試験の中間解析結果
Interim Results of a Phase 1–2a Trial of Ad26.COV2.S Covid-19 Vaccine
J. Sadoff and Others
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)感染による新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の進行中のパンデミックを封じ込めるため,有効なワクチンが緊急に必要とされている.ワクチン候補である Ad26.COV2.S は,安定化させた全長の SARS-CoV-2 スパイク蛋白をコードする遺伝子組換え非増殖型アデノウイルス血清型 26(Ad26)ベクターである.
多施設共同プラセボ対照第 1・2a 相試験で,18~55 歳の健康な成人(コホート 1)と 65 歳以上の成人(コホート 3)を,Ad26.COV2.S ワクチン 1 mL あたりのウイルス粒子数 5×1010 個(低用量),1×1011 個(高用量),プラセボのいずれかを単回接種,または 2 回接種する 5 つの群に無作為に割り付けた.コホート 2 では単回接種レジメンと 2 回接種レジメンをより長期間比較するデータを収集しており,その結果は本稿では報告しない.主要エンドポイントは各接種スケジュールの安全性と反応原性(副反応)とした.
コホート 1 とコホート 3 の計 805 例に初回接種が行われた時点,およびコホート 1 で 2 回目の接種が行われた時点で,安全性データとして収集した有害事象(solicited adverse events)のうち,頻度がとくに高かったのは,疲労,頭痛,筋肉痛,注射部位疼痛であった.全身性有害事象は,発熱の頻度がもっとも高かった.全身性有害事象の頻度はコホート 3 のほうがコホート 1 より低く,また低用量ワクチン接種者のほうが高用量ワクチン接種者より低かった.反応原性は 2 回目の接種後のほうが低かった.野生型ウイルスに対する中和抗体価は,ワクチンの用量や年齢群にかかわらず初回接種後 29 日目に全参加者の 90%以上で検出され(幾何平均抗体価 [GMT] 212~354),コホート 1a では 57 日目までにさらに上昇し,96%に達した(GMT 288~488).抗体価は少なくとも 71 日目まで安定していた.2 回目の接種で,抗体価は 2.6~2.9 倍に上昇した(GMT 827~1,266).スパイク結合抗体応答は中和抗体応答と同程度であった.15 日目の時点で,CD4 陽性 T 細胞応答はコホート 1 の参加者の 76~83%,コホート 3 の参加者の 60~67%で検出され,1 型ヘルパー T 細胞への明らかな偏向が認められた.CD8 陽性 T 細胞応答については,全体的に強くみられたものの,コホート 3 のほうが低かった.
Ad26.COV2.S の安全性と免疫原性のプロファイルは,このワクチン候補の開発を進めることを支持している.(ジョンソン・エンド・ジョンソン社,米国保健福祉省 生物医学先端研究開発局から研究助成を受けた.COV1001 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04436276)