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January 7, 2021 Vol. 384 No. 1

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Covid-19 肺炎による入院患者に対するトシリズマブ
Tocilizumab in Patients Hospitalized with Covid-19 Pneumonia

C. Salama and Others

背景

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)肺炎は過剰な炎症反応を伴うことが多い.Covid-19 の発生は,十分な医療サービスを受けていない集団や人種・民族的マイノリティ集団で不均衡に多いにもかかわらず,Covid-19 肺炎で入院中のこれらの集団の患者に対する抗インターロイキン-6 受容体抗体トシリズマブの安全性と有効性は明らかにされていない.

方 法

Covid-19 肺炎で入院し,人工呼吸管理を受けていない患者を,標準治療に加えて,トシリズマブ(8 mg/kg 体重)を 1 回または 2 回静脈内投与する群と,プラセボを投与する群に 2:1 の割合で無作為に割り付けた.施設の選択は,高リスク集団とマイノリティ集団を登録している施設を含めることに重点をおいた.主要転帰は 28 日目までの人工呼吸管理または死亡とした.

結 果

389 例が無作為化され,修正 intention-to-treat 集団にはトシリズマブ群の 249 例とプラセボ群の 128 例が含まれた.56.0%がヒスパニック系またはラテン系,14.9%が黒人,12.7%がアメリカインディアンまたはアラスカ先住民,12.7%が非ヒスパニック系白人,3.7%がその他の人種・民族または不明であった.28 日目までに人工呼吸管理を受けたか死亡した患者の累積比率は,トシリズマブ群で 12.0%(95%信頼区間 [CI] 8.5~16.9),プラセボ群で 19.3%(95% CI 13.3~27.4)であった(人工呼吸管理または死亡のハザード比 0.56,95% CI 0.33~0.97,log-rank 検定で P=0.04).生存時間(time-to-event)解析で評価した臨床的失敗までの期間は,トシリズマブ群のほうがプラセボ群よりも良好であった(ハザード比 0.55,95% CI 0.33~0.93).28 日目までの全死因死亡率は,トシリズマブ群で10.4%,プラセボ群で 8.6%であった(加重差 2.0 パーセントポイント,95% CI -5.2~7.8).安全性解析対象集団では,重篤な有害事象はトシリズマブ群の 250 例中 38 例(15.2%)とプラセボ群の 127 例中 25 例(19.7%)に発現した.

結 論

Covid-19 肺炎で入院し,人工呼吸管理を受けていない患者において,トシリズマブは,人工呼吸管理または死亡の複合転帰をとる確率を低下させたが,生存を改善させなかった.新たな安全性シグナルは確認されなかった.(ジェネンテック社から研究助成を受けた.EMPACTA 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04372186)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 384 : 20 - 30. )