アデノシンデアミナーゼ欠損症に対する自家 ex vivo レンチウイルス遺伝子治療
Autologous Ex Vivo Lentiviral Gene Therapy for Adenosine Deaminase Deficiency
D.B. Kohn and Others
アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症による重症複合免疫不全症(ADA-SCID)は,まれな,生命を脅かす原発性免疫不全症である.
ADA-SCID 患者 50 例(米国 30 例,英国 20 例)に,ヒト ADA をコードする自己不活性化レンチウイルスベクターによって ex vivo で遺伝子導入した自家 CD34 陽性造血幹・前駆細胞(HSPC)から成る開発中の遺伝子治療を行った.2 件の米国の試験(新鮮製剤と凍結保存した製剤を使用)の追跡調査 24 ヵ月の時点でのデータを,1 件の英国の試験(新鮮製剤を使用)の追跡調査 36 ヵ月の時点でのデータとともに解析した.
全生存率はすべての試験で,最長 24 ヵ月および 36 ヵ月まで 100%であった.無イベント生存率(酵素補充療法の再開または救済同種造血幹細胞移植の実施がない)は,12 ヵ月の時点で 97%(米国の 2 試験)と 100%(英国の試験),24 ヵ月の時点でそれぞれ 97%と 95%,36 ヵ月の時点で 95%(英国の試験)であった.米国の試験の 30 例中 29 例と,英国の試験の 20 例中 19 例で遺伝子組換え HSPC の長期生着が得られた.患者の解毒代謝と ADA 活性値の正常化は維持された.免疫再構築は強固で,米国の 2 試験の患者の 90%と英国の試験の患者の 100%がそれぞれ 24 ヵ月と 36 ヵ月の時点までに免疫グロブリン補充療法を中止した.単クローン性の増殖,白血球増殖性の合併症,複製能をもつレンチウイルスの出現の証拠は認められず,自己免疫イベントや移植片対宿主病は発生しなかった.有害事象の大部分はグレードが低かった.
ADA-SCID をレンチウイルスによる ex vivo HSPC 遺伝子治療で治療した結果,全生存率と無イベント生存率は高く,ADA の発現,代謝の正常化,免疫能の再構築が維持された.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01852071,NCT02999984,NCT01380990)