心臓手術中に脳梗塞の予防を目的として行う左心耳閉鎖術
Left Atrial Appendage Occlusion during Cardiac Surgery to Prevent Stroke
R.P. Whitlock and Others
左心耳の外科的閉鎖が心房細動患者の脳梗塞を予防するという仮説が立てられているが,証明されていない.左心耳閉鎖術は,ほかの理由で行われる心臓手術中に施行可能である.
心房細動を有し,CHA2DS2-VASc スコア(0~9 点で,スコアが高いほど脳梗塞のリスクが高いことを示す)が 2 点以上で,ほかの適応で心臓手術を受ける予定の患者を対象として,多施設共同無作為化試験を行った.患者は術中に左心耳閉鎖術を受ける群と受けない群に無作為に割り付けられ,全例が追跡期間中に経口抗凝固薬を含む通常の診療を受けることを期待された.主要転帰は脳梗塞(神経画像所見を伴う一過性脳虚血発作を含む)または全身性塞栓症の発生とした.患者,試験担当者,プライマリケア医(外科医を除く)には試験群の割付けを知らせなかった.
主要解析集団は閉鎖群 2,379 例と非閉鎖群 2,391 例であり,平均年齢は 71 歳,平均 CHA2DS2-VASc スコアは 4.2 点であった.患者は平均 3.8 年間追跡された.患者の 92.1%が割り付けられた手術内容を受け,3 年の時点で 76.8%が経口抗凝固薬を継続していた.脳梗塞または全身性塞栓症は,閉鎖群の 114 例(4.8%)と非閉鎖群の 168 例(7.0%)に発生した(ハザード比 0.67,95%信頼区間 0.53~0.85,P=0.001).周術期出血,心不全,死亡の発生率に群間で有意差は認められなかった.
心臓手術を受けた心房細動患者のうち,同時に左心耳閉鎖術を受けた患者は,受けなかった患者よりも脳梗塞または全身性塞栓症のリスクが低かった.大部分が抗血栓療法を継続していた.(カナダ国立保健研究機構ほかから研究助成を受けた.LAAOS III 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01561651)