癌における KRASG12C 阻害に対する耐性獲得
Acquired Resistance to KRASG12C Inhibition in Cancer
M.M. Awad and Others
KRAS 阻害薬であるアダグラシブ(adagrasib)とソトラシブ(sotorasib)は,臨床試験で,KRAS の 12 番目のコドンにグリシンからシステインへのアミノ酸置換(KRASG12C)が生じている癌に対する有望な活性を示している.これらの治療に対する耐性獲得の機序は,現在のところ不明である.
アダグラシブ単剤療法を受けた KRASG12C 変異陽性癌患者において,治療前に採取した検体と耐性発現後に採取した検体を用いてゲノム解析と組織学的解析を行い,比較した.KRASG12C 阻害薬に対する耐性を付与する変異を検討するために,細胞を用いた実験を行った.
38 例を組み入れた.内訳は非小細胞肺癌患者 27 例,大腸癌患者 10 例,虫垂癌患者 1 例であった.アダグラシブに対する耐性獲得の推定機序は 17 例(コホートの 45%)に検出され,うち 7 例(コホートの 18%)には同時に複数の機序が認められた.獲得された KRAS 変異は,G12D/R/V/W,G13D,Q61H,R68S,H95D/Q/R,Y96C と,KRASG12C 対立遺伝子の高レベルの増幅などであった.獲得されたバイパス経路による耐性機序は,MET 増幅,NRAS,BRAF,MAP2K1,RET の活性化変異,ALK,RET,BRAF,RAF1,FGFR3 の癌遺伝子融合,NF1 と PTEN の機能喪失型変異などであった.組織生検でペア検体が得られた肺腺癌患者 9 例中 2 例で扁平上皮癌への組織学的形質転換が認められ,他の耐性機序は同定されなかった.in vitro における網羅的遺伝子変異検出法を用いて,KRASG12C 阻害薬に対する耐性を付与する KRAS 変異の様相を系統的に明らかにした.
さまざまなゲノム機序と組織学的機序が,共有結合型 KRASG12C 阻害薬に対する耐性を付与している.癌患者において,この薬剤耐性の発現を抑制・克服するためには,新たな治療戦略が必要である.(ミラティ セラピューティクス社ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03785249)