BRCA1 または BRCA2 変異陽性の乳癌患者に対する術後補助療法としてのオラパリブ
Adjuvant Olaparib for Patients with BRCA1- or BRCA2- Mutated Breast Cancer
A.N.J. Tutt and Others
ポリ(アデノシン二リン酸リボース)ポリメラーゼ阻害薬は,合成致死性を利用して,相同組換えによる修復機構が欠損した癌を標的とする.BRCA1 または BRCA2 生殖細胞系列変異に関連する早期乳癌患者の再発を減らすため,新たな治療法が必要とされている.
ヒト上皮成長因子受容体 2(HER2)陰性の早期乳癌で,BRCA1 または BRCA2 に生殖細胞系列の病原性変異あるいは病原性の可能性がある変異と,高リスクの臨床病理学的因子を有し,局所療法と術前または術後化学療法を受けた患者を対象とした第 3 相二重盲検無作為化試験を行った.患者を,オラパリブを 1 年間経口投与する群とプラセボを投与する群に(1:1 の割合で)無作為に割り付けた.主要評価項目は浸潤性疾患のない生存とした.
1,836 例が無作為化された.追跡期間中央値 2.5 年の時点で行った,事前に規定したイベント主導型中間解析では,浸潤性疾患のない 3 年生存率はオラパリブ群 85.9%,プラセボ群 77.1%であった(差 8.8 パーセントポイント,95%信頼区間 [CI] 4.5~13.0,浸潤性疾患または死亡のハザード比 0.58,99.5% CI 0.41~0.82,P<0.001).遠隔転移のない 3 年生存率はオラパリブ群 87.5%,プラセボ群 80.4%であった(差 7.1 パーセントポイント,95% CI 3.0~11.1,遠隔転移または死亡のハザード比 0.57,99.5% CI 0.39~0.83,P<0.001).オラパリブは,プラセボよりも死亡が少ないことと関連していたが(それぞれ 59 例と 86 例)(ハザード比 0.68,99% CI 0.44~1.05,P=0.02),群間差はこの中間解析における P 値の有意水準 0.01 未満では有意でなかった.安全性データはオラパリブの既知の副作と一致しており,重篤な有害事象やとくに注目すべき有害事象がオラパリブ群でプラセボ群より多いということはなかった.
高リスクの HER2 陰性の早期乳癌があり,BRCA1 または BRCA2 に生殖細胞系列の病原性変異あるいは病原性の可能性がある変異を有する患者において,局所療法と術前または術後化学療法完了後の補助療法としてのオラパリブは,浸潤性疾患または遠隔転移のない生存期間がプラセボよりも有意に長いことと関連していた.患者報告による全般的 QOL に対するオラパリブの有効性は限られていた.(米国国立がん研究所,アストラゼネカ社から研究助成を受けた.OlympiA 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02032823)