ヒトにおける欠陥・欠損した ATG7 を介するオートファジーの発達への影響
Developmental Consequences of Defective ATG7-Mediated Autophagy in Humans
J.J. Collier and Others
オートファジーは哺乳類細胞の主要な細胞内分解経路である.マウスで,中核となるオートファジー関連(ATG)遺伝子を全身から除去すると,胚性または周産期致死となり,また,条件付きモデルでは神経変性を示す.オートファジー異常は幅広い複雑なヒト疾患と関連しているが,先天性のオートファジー障害はまれである.
5 家族を対象に,遺伝学的解析,臨床的解析,神経画像解析を行った.患者由来の線維芽細胞,骨格筋生検標本,マウスの胎仔線維芽細胞,酵母を用いて機序を調査した.
中核となるオートファジー関連遺伝子の 1 つで,古典的分解性オートファジーに不可欠な蛋白をコードしているヒト ATG7 に有害な劣性変異を発見した.異なる ATG7 変異を有する 5 家族 12 例の患者に,脳,筋肉,内分泌の複雑な神経発達障害が認められた.患者には,小脳および脳梁の異常と,さまざまな程度の顔面変形が認められた.これらの患者は,ATG7 蛋白の減少または欠損によるオートファジーフラックスに障害が認められる状態で生存していた.オートファジーによる不要物の隔離は著明に減少していたが,基底オートファジーが行われていることは,ATG7 を欠損した線維芽細胞や骨格筋で容易に確認された.さまざまなモデル系において有害な ATG7 変異で相補すると,野生型の ATG7 を再導入した場合と比較して,オートファジー機能は低下または欠損した.
オートファジーに不可欠なエフェクター酵素であり,類似機能をもつ既知のパラログの存在しない ATG7 が,重度に減少しているか完全に欠損した状態で生存している,神経発達障害の患者を数例特定した.(ウェルカムトラスト ミトコンドリア研究センターほかから研究助成を受けた.)