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March 11, 2021 Vol. 384 No. 10

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I 型脊髄性筋萎縮症に対するリスジプラム
Risdiplam in Type 1 Spinal Muscular Atrophy

G. Baranello and Others

背景

I 型脊髄性筋萎縮症は,機能性運動神経細胞生存(SMN)蛋白値が低いことに起因するまれな進行性神経筋疾患である.リスジプラム(risdiplam)は,SMN2 のメッセンジャー RNA 前駆体スプライシングを修飾し,機能性 SMN 蛋白値を上昇させる経口投与可能な小分子である.

方 法

I 型脊髄性筋萎縮症の生後 1~7 ヵ月の乳児を対象としてリスジプラムを検討する,パート 1,パート 2 から成る第 2・3 相非盲検試験のパート 1 の結果を報告する.I 型は,罹患した乳児が支えなしで座位を保持する能力を獲得できないことを特徴とする.主要評価項目は,安全性,薬物動態,薬力学(血中 SMN 蛋白濃度など),試験のパート 2 のためのリスジプラムの用量選択とした.探索的評価項目は,支えなしで座位を 5 秒以上保持する能力などとした.

結 果

21 例が登録された.4 例を低用量コホートに組み入れ,12 ヵ月の時点での最終用量をリスジプラム 0.08 mg/kg 体重/日として投与し,17 例を高用量コホートに組み入れ,12 ヵ月の時点での最終用量を 0.2 mg/kg/日として投与した.ベースラインの血中 SMN 蛋白濃度の中央値は,低用量コホートで 1.31 ng/mL,高用量コホートで 2.54 ng/mL であったが,12 ヵ月の時点での中央値はそれぞれ 3.05 ng/mL,5.66 ng/mL に上昇しており,それぞれ中央値でベースライン値の 3.0 倍,1.9 倍に相当した.重篤な有害事象は,肺炎,気道感染,急性呼吸不全などであった.今回の論文公開の時点で,4 例が呼吸器系の合併症により死亡していた.支えなしで座位を 5 秒以上保持できた乳児は,高用量コホートでは 7 例,低用量コホートでは 0 例であった.パート 2 にはリスジプラムの高いほうの用量(0.2 mg/kg/日)を選択した.

結 論

I 型脊髄性筋萎縮症の乳児では,経口リスジプラムを用いた治療により血中の機能性 SMN 蛋白の発現量が増加した.(エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02913482)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 384 : 915 - 23. )