March 11, 2021 Vol. 384 No. 10
骨髄悪性疾患における細胞遺伝学的解析の代替手法としてのゲノムシーケンシング
Genome Sequencing as an Alternative to Cytogenetic Analysis in Myeloid Cancers
E.J. Duncavage and Others
急性骨髄性白血病(AML)患者や骨髄異形成症候群(MDS)患者のリスク層別化には,ゲノム解析が不可欠である.全ゲノムシーケンシングは,従来の細胞遺伝学的手法やシーケンシング法の代替手法となる可能性があるが,その精度,実施可能性,臨床的有用性は明らかにされていない.
骨髄悪性疾患患者 263 例のゲノムプロファイルを取得するため,効率化した全ゲノムシーケンシング法を行った.このうち 235 例では,細胞遺伝学的解析による結果が得られていた.既存の欧州白血病ネットワーク(ELN)ガイドラインに基づくリスク層別化に用いる変異を検出し,所要時間を最小限にする目的に合わせて,標本調製,シーケンシング,解析を改良した.全ゲノムシーケンシングの性能を,得られた結果と,細胞遺伝学的解析および標的シーケンシングの結果を比較することにより解析した.
全ゲノムシーケンシングによって,細胞遺伝学的解析で同定された反復性転座 40 個とコピー数変異 91 個がすべて検出された.さらに,235 例中 40 例(17.0%)では,臨床的に報告する価値のある新たなゲノムイベントが同定された.連続する 117 例の試料を用いた前向きシーケンシングは,中央値で 5 日間かかり,29 例(24.8%)で新たな遺伝子情報が得られ,19 例(16.2%)でリスク分類が変更された.細胞遺伝学的解析ではなくシーケンシングの結果で定義された標準的な AML リスク群は,臨床転帰との相関が認められた.全ゲノムシーケンシングを用いると,細胞遺伝学的解析では結果が不確定であった患者を,臨床転帰が明らかに異なるリスク群に層別化することができた.
この研究では,全ゲノムシーケンシングにより,AML または MDS 患者のゲノムプロファイリングを迅速かつ正確に行えることが明らかになった.また,全ゲノムシーケンシングは従来の細胞遺伝学的解析よりも診断率が高く,標準的なリスク分類に基づくリスク層別化をより効率的に行うことができた.(サイトマン癌研究基金ほかから研究助成を受けた.)