September 9, 2021 Vol. 385 No. 11
季節性マラリアに対するワクチン接種の単独と化学的予防併用との比較
Seasonal Malaria Vaccination with or without Seasonal Malaria Chemoprevention
D. Chandramohan and Others
アフリカのサヘル以南の多くの地域で,マラリア対策は依然として困難な課題である.
個人単位の無作為化比較試験において,合併症を伴わないマラリアの予防に関して,シーズンごとの RTS,S/AS01E ワクチンの接種が化学的予防に対して非劣性であるかどうか,また,合併症を伴わないマラリア,および重症マラリアに関連する転帰の予防に関して,この 2 つの介入の併用がいずれか一方のみに優越性を示すかどうかを評価した.
生後 5~17 ヵ月の小児 6,861 例を,スルファドキシン–ピリメタミン(sulfadoxine–pyrimethamine)とアモジアキン(amodiaquine)を投与する群(2,287 例 [化学的予防単独群]),RTS,S/AS01E を接種する群(2,288 例 [ワクチン単独群]),化学的予防と RTS,S/AS01E 接種を行う群(2,286 例 [併用群])に無作為に割り付けた.このうち,それぞれ 1,965 例,1,988 例,1,967 例が割り付けられた介入の初回投与を受け,3 年間追跡された.ワクチンを接種した 5 例に翌日熱性痙攣が発現したが,回復し,後遺症はなかった.合併症を伴わない臨床的マラリアは,化学的予防単独群では 1,000 リスク人年あたり 305 件,ワクチン単独群では 1,000 リスク人年あたり 278 件,併用群では 1,000 リスク人年あたり 113 件発生した.RTS,S/AS01E の化学的予防と比較した防御効果のハザード比は 0.92(95%信頼区間 [CI] 0.84~1.01)で,事前に規定した非劣性マージンの 1.20 を下回った.併用の化学的予防単独と比較した防御効果は,臨床的マラリアに対しては 62.8%(95% CI 58.4~66.8),重症マラリア(世界保健機関の定義に基づく)による入院に対しては 70.5%(95% CI 41.9~85.0),マラリアによる死亡に対しては 72.9%(95% CI 2.9~92.4)であった.併用のワクチン単独と比較した防御効果は,これらの転帰に対してそれぞれ 59.6%(95% CI 54.7~64.0),70.6%(95% CI 42.3~85.0),75.3%(95% CI 12.5~93.0)であった.
合併症を伴わないマラリアの予防に関して,RTS,S/AS01E 接種は化学的予防に対して非劣性を示した.この 2 つの介入を併用することで,いずれか一方のみを行った場合と比較して,合併症を伴わないマラリア,重症マラリア,マラリアによる死亡の発生率が大きく低下した.(共同グローバルヘルス試験,PATH から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03143218)