September 30, 2021 Vol. 385 No. 14
プライマリケアにおける抗うつ薬の継続と中止との比較
Maintenance or Discontinuation of Antidepressants in Primary Care
G. Lewis and Others
プライマリケアで治療を受けるうつ病患者は,抗うつ薬の投与を長期間受ける可能性がある.この状況下で,抗うつ薬療法の継続の効果を中止と比較したデータは限られている.
英国の家庭医療科(general practice)150 ヵ所で治療を受けている成人を対象として,無作為化二重盲検試験を行った.すべての患者は,抑うつエピソードの既往が 2 回以上あるか,抗うつ薬を 2 年以上服用しており,抗うつ薬の中止を検討できるほど状態が良好であった.シタロプラム,フルオキセチン(fluoxetine),セルトラリン,ミルタザピンのいずれかの投与を受けていた患者を,現行の抗うつ薬療法を継続する群(継続群)と,マッチさせたプラセボを用いて現行の抗うつ薬療法を漸減して中止する群(中止群)に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要転帰は 52 週の試験期間中のうつ病の初回再発とし,生存時間(time-to-event)解析で評価した.副次的転帰は,抑うつ症状,不安症状,身体症状,離脱症状,QOL,抗うつ薬またはプラセボを中止するまでの期間,全般的な気分の評価とした.
1,466 例がスクリーニングを受けた.このうち 478 例(継続群 238 例,中止群 240 例)が試験に登録された.平均年齢は 54 歳であり,73%が女性であった.割り付けられたレジメンの遵守率は,継続群 70%,中止群 52%であった.52 週までに,継続群 238 例中 92例(39%)と中止群 240 例中 135 例(56%)が再発した(ハザード比 2.06,95%信頼区間 [CI] 1.56~2.70,P<0.001).副次的転帰には,主要転帰とおおむね同じ傾向が認められた.中止群の患者では,抑うつ症状,不安症状,離脱症状が継続群の患者よりも多く認められた.
抗うつ薬療法を中止できるほど状態が良好なプライマリケア患者において,現行の抗うつ薬療法を中止する群に割り付けられた患者は,継続する群に割り付けられた患者よりも 52 週までのうつ病の再発リスクが高かった.(英国国立衛生研究所から研究助成を受けた.ANTLER 試験:ISRCTN 登録番号 ISRCTN15969819)