October 14, 2021 Vol. 385 No. 16
駆出率の保持された心不全に対するエンパグリフロジン
Empagliflozin in Heart Failure with a Preserved Ejection Fraction
S.D. Anker and Others
ナトリウム–グルコース共輸送体 2 阻害薬は,駆出率の低下した心不全患者の心不全による入院のリスクを低下させるが,駆出率の保持された心不全患者に対する効果は明らかにされていない.
二重盲検試験で,ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類 II ~IV 度の心不全を有する,駆出率が 40%超の患者 5,988 例を,通常治療に加えて,エンパグリフロジン(10 mg を 1 日 1 回)を投与する群とプラセボを投与する群に無作為に割り付けた.主要転帰は,心血管死または心不全による入院の複合とした.
追跡期間中央値 26.2 ヵ月間で,主要転帰イベントはエンパグリフロジン群では 2,997 例中 415 例(13.8%),プラセボ群では 2,991 例中 511 例(17.1%)に発生した(ハザード比 0.79,95%信頼区間[CI] 0.69~0.90,P<0.001).この効果は主に,エンパグリフロジン群の心不全による入院のリスクがプラセボ群よりも低かったことに関連していた.エンパグリフロジンの効果は,ベースライン時の糖尿病の有無にかかわらず一貫すると思われた.心不全による入院の総数は,エンパグリフロジン群のほうがプラセボ群よりも少なかった(エンパグリフロジン群 407 件,プラセボ群 541 件,ハザード比 0.73,95% CI 0.61~0.88,P<0.001).単純性性器感染症,単純性尿路感染症,低血圧の発現頻度は,エンパグリフロジン群のほうが高かった.
駆出率の保持された心不全患者において,エンパグリフロジンは,糖尿病の有無にかかわらず,心血管死または心不全による入院の複合リスクを低下させた.(ベーリンガーインゲルハイム社,イーライリリー社から研究助成を受けた.EMPEROR-Preserved 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03057951)