October 14, 2021 Vol. 385 No. 16
自閉症スペクトラム障害の小児・思春期児に対するオキシトシンの鼻腔内投与
Intranasal Oxytocin in Children and Adolescents with Autism Spectrum Disorder
L. Sikich and Others
実験的研究と小規模な臨床試験では,オキシトシンの鼻腔内投与により自閉症スペクトラム障害者の社会的障害が改善する可能性があることが示唆されている.臨床診療では,多くの自閉症スペクトラム障害児にオキシトシンが投与されている.
自閉症スペクトラム障害を有する 3~17 歳の小児・思春期児を対象として,24 週間の経鼻オキシトシン療法のプラセボ対照第 2 相試験を行った.参加者を年齢と言語流暢性で層別化し,オキシトシンを 1 日の総投与量 48 国際単位を目標として鼻腔内投与する群と,プラセボを投与する群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要転帰は,異常行動チェックリストの修正ひきこもり下位尺度(ABC-mSW)における,ベースラインからの変化量の最小二乗平均値とした.この下位尺度には 13 項目(スコア範囲は 0~39 で,高いほど社会的相互作用が少ないことを示す)が含まれた.副次的転帰は,社会的機能に関するその他の 2 つの指標と,IQ の簡易指標とした.
スクリーニングを受けた 355 例のうち,290 例が登録された.146 例がオキシトシン群,144 例がプラセボ群に割り付けられ,それぞれ 139 例と 138 例が,ABC-mSW 評価をベースライン時とベースライン後に 1 回以上受け,修正 intention-to-treat 解析の対象となった.ABC-mSW スコアのベースラインからの変化量の最小二乗平均値(主要転帰)は,オキシトシン群で -3.7,プラセボ群で-3.5 であった(最小二乗平均差 -0.2,95%信頼区間 -1.5~1.0,P=0.61).副次的転帰の大部分に群間で差は認められなかった.有害事象の発現率と重症度は 2 群で同程度であった.
自閉症スペクトラム障害の小児・思春期児に対する経鼻オキシトシン療法の今回のプラセボ対照試験では,24 週の期間中,社会的機能および認知機能の指標のベースラインからの変化量の最小二乗平均値に群間で有意差は示されなかった.(米国国立小児保健・人間発達研究所から研究助成を受けた.SOARS-B 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01944046)