December 2, 2021 Vol. 385 No. 23
経カテーテル大動脈弁置換術後の心房細動に対するエドキサバンとビタミン K 拮抗薬との比較
Edoxaban versus Vitamin K Antagonist for Atrial Fibrillation after TAVR
N.M. Van Mieghem and Others
経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)成功後の心房細動に対する直接経口抗凝固薬の役割について,ビタミン K 拮抗薬との十分な比較検討は行われていない.
TAVR 成功後の患者で,経口抗凝固療法の適応症である心房細動を TAVR 前から有していた例と新規発症した例において,エドキサバンとビタミン K 拮抗薬とを比較する多施設共同前向き無作為化非盲検・評価者盲検試験を行った.主要有効性転帰は全死因死亡,心筋梗塞,脳梗塞,全身性血栓塞栓症,弁血栓,大出血から成る有害事象の複合とした.主要安全性転帰は大出血とした.階層的検定計画に基づき,主要有効性転帰と安全性転帰については非劣性を逐次的に評価し,ハザード比の 95%信頼区間の上限が 1.38 を超えない場合にエドキサバンの非劣性が確立されるものとした.大出血についてエドキサバンの非劣性と優越性が確立された場合に,有効性についてエドキサバンの優越性を検証することとした.
1,426 例(各群 713 例)が組み入れられた.患者の平均年齢は 82.1 歳であり,47.5%が女性であった.ほぼ全例が TAVR 前から心房細動を有していた.複合主要有効性転帰の発生率は,エドキサバン群では 100 人年あたり 17.3 件,ビタミン K 拮抗薬群では 16.5 件であった(ハザード比 1.05,95%信頼区間 [CI] 0.85~1.31,非劣性の P=0.01).大出血の発生率はそれぞれ 100 人年あたり 9.7 件と 7.0 件であり(ハザード比 1.40,95% CI 1.03~1.91,非劣性の P=0.93),この群間差は主に,エドキサバン群のほうが消化管出血が多かったことによるものであった.全死因死亡または脳梗塞の発生率は,エドキサバン群では 100 人年あたり 10.0 件,ビタミン K 拮抗薬群では 11.7 件であった(ハザード比 0.85,95% CI 0.66~1.11).
TAVR が成功し,大部分が TAVR 前から心房細動を有していたこの患者集団では,臨床的有害事象の複合主要転帰について,ハザード比の非劣性マージンを 38%とした場合に,エドキサバンはビタミン K 拮抗薬に対して非劣性であった.大出血の発生率は,エドキサバン群のほうがビタミン K 拮抗薬群よりも高かった.(第一三共社から研究助成を受けた.ENVISAGE-TAVI AF 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02943785)