December 2, 2021 Vol. 385 No. 23
静脈血栓塞栓症予防に用いるミルベクシアン
Milvexian for the Prevention of Venous Thromboembolism
J.I. Weitz and Others
動静脈血栓塞栓症の予防と治療において,第 XIa 因子阻害薬は,従来の抗凝固薬よりも有効性が高く,出血が減少する可能性がある.経口第 XIa 因子阻害薬ミルベクシアン(milvexian)の有効性と安全性に関して,さらなるデータが必要である.
並行群間第 2 相試験で,人工膝関節置換術を受ける患者1,242 例を,ミルベクシアンの 7 通りの術後レジメン(25 mg,50 mg,100 mg,200 mg のいずれかの用量で 1 日 2 回投与,または 25 mg,50 mg,200 mg のいずれかの用量で 1 日 1 回投与)を行う群と,エノキサパリン(40 mg を 1 日 1 回)を投与する群に無作為に割り付けた.主要有効性転帰は,静脈血栓塞栓症(無症候性深部静脈血栓症,イベントが確認された症候性静脈血栓塞栓症,全死因死亡の複合)とした.主要安全性転帰は出血とした.
静脈血栓塞栓症は,ミルベクシアンの 1 日 2 回投与では,25 mg 群の 129 例中 27 例(21%),50 mg 群の 124 例中 14 例(11%),100 mg 群の 134 例中 12 例(9%),200 mg 群の 131 例中 10 例(8%)に発生した.ミルベクシアンの 1 日 1 回投与では, 25 mg 群の 28 例中 7 例(25%),50 mg 群の 127 例中 30 例(24%),200 mg 群の 123 例中 8 例(7%)に発生したのに対し,エノキサパリン群では 252 例中 54 例(21%)に発生した.ミルベクシアン 1 日 2 回投与の用量反応関係は有意であり(片側 P<0.001),ミルベクシアンの 1 日 2 回投与を受けた患者における静脈血栓塞栓症の発生率 12%は,事前に規定した基準の 30%よりも有意に低かった(片側 P<0.001).あらゆる重症度の出血は,ミルベクシアン群 923 例中 38 例(4%),エノキサパリン群 296 例中 12 例(4%)に発生した.大出血,または大出血ではないが臨床的に重要な出血はそれぞれ 1%と 2%に発生し,重篤な有害事象はそれぞれ 2%と 4%で報告された.
人工膝関節置換術を受ける患者において,ミルベクシアンの経口投与による術後の第 XIa 因子阻害は,静脈血栓塞栓症の予防に有効であり,関連する出血リスクは低かった.(ブリストル マイヤーズ スクイブ社,ヤンセン・リサーチ・アンド・ディベロップメント社から研究助成を受けた.AXIOMATIC-TKR 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03891524)