構音障害を有する麻痺患者 1 例の発話を読み取るための神経補綴装置
Neuroprosthesis for Decoding Speech in a Paralyzed Person with Anarthria
D.A. Moses and Others
発話不能の麻痺患者のコミュニケーション能力を回復させるための技術は,自律性と QOL を向上させる可能性がある.このような患者の大脳皮質の活動から直接単語と文章を解読するアプローチは,既存のコミュニケーションの補助方法を超える進歩となる可能性がある.
脳幹梗塞による構音障害(明瞭に発話する能力の消失)と痙性四肢麻痺を有する 1 例で,発話を制御する感覚運動皮質領域の硬膜下に高密度の多電極アレイを埋め込んだ.48 回のセッションで,この患者が 50 語の語彙セットのなかから個別の単語を発しようとする際の皮質活動を 22 時間記録した.深層学習アルゴリズムを用いて,記録された皮質活動のパターンから単語の検出と分類を行うコンピュータモデルを作成した.患者が発話を試みる全文を同時に読み取るため,このコンピュータモデルと,先行する単語から次に続く単語の確率を算出する自然言語モデルを併せて用いた.
この患者の皮質活動から,文章をリアルタイムで 1 分間に中央値 15.2 語の割合で読み取り,誤謬率は中央値 25.6%であった.事後解析では,患者が個別の単語を発しようとする試みの 98%を検出し,皮質シグナルを用いた単語の分類の精度は 47.1%で,81 週の研究期間を通じて安定していた.
脳幹梗塞による構音障害と痙性四肢麻痺を有する 1 例に深層学習モデルと自然言語モデルを用いたところ,発話しようとする際の皮質活動から直接単語と文章を読み取ることができた.(フェイスブック社ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03698149)