September 9, 2021 Vol. 385 No. 11
移動式脳卒中ユニットの前向き多施設共同比較試験
Prospective, Multicenter, Controlled Trial of Mobile Stroke Units
J.C. Grotta and Others
移動式脳卒中ユニット(MSU)は,スタッフと CT スキャナをのせた救急車であり,救急隊(EMS)による標準的管理よりも早く組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)を投与できる可能性がある.MSU によって転帰が変わるのか,またどの程度変わるのかは広く研究されていない.
前向き多施設共同観察試験で,急性期脳梗塞の症状発現後 4.5 時間以内に行う MSU による管理と EMS による管理を 1 週ごとに交替し,転帰を比較評価した.主要転帰は,効用値で重み付けした修正 Rankin スケールのスコア(0~1 で,スコアが高いほど患者の評価に基づく転帰が良好であることを示す.修正 Rankin スケール [0~6 で,スコアが高いほど障害が重症であることを示す] のスコアから算出)とした.主要解析では,t-PA 適格患者における,効用値で重み付けした修正 Rankin スケールの 90 日時点でのスコアを検討した(スコアは≧0.91 または<0.91 に分類.それぞれ修正 Rankin スケールスコア≦1,>1 とほぼ同等).登録された患者全例を対象とした解析も行った.
1,515 例が登録され,うち 1,047 例が t-PA 投与に適格であり,617 例が MSU,430 例が EMS による治療を受けた.脳梗塞発症から t-PA 投与までの時間の中央値は,MSU 群 72 分,EMS 群 108 分であった.t-PA 適格患者のうち,MSU 群では 97.1%が t-PA 投与を受けたのに対し,EMS 群では 79.5%であった.t-PA 適格患者における,効用値で重み付けした修正 Rankin スケールの 90 日時点でのスコアの平均は,MSU 群 0.72,EMS 群 0.66 であった(スコア≧0.91 の補正オッズ比 2.43,95%信頼区間 [CI] 1.75~3.36,P<0.001).t-PA 適格患者のうち,MSU 群の 55.0%と EMS 群の 44.4%が,90 日時点での修正 Rankin スケールスコアが 0 または 1 であった.登録された患者全例における,効用値で重み付けした修正 Rankin スケールの退院時のスコアの平均は,MSU 群 0.57,EMS 群 0.51 であった(スコア≧0.91 の補正オッズ比 1.82,95% CI 1.39~2.37,P<0.001).副次的臨床転帰は,大部分が MSU 群のほうが良好であった.90 日死亡率は MSU 群 8.9%,EMS 群 11.9%であった.
t-PA 投与に適格な急性期脳梗塞患者において,MSU で管理した場合の効用値で重み付けした 90 日時点での障害転帰は,EMS が管理するよりも良好であった.(患者中心アウトカム研究所から研究助成を受けた.BEST-MSU 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02190500)