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September 9, 2021 Vol. 385 No. 11

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バングラデシュ農村部の乳児に対する鉄剤介入の利益とリスク
Benefits and Risks of Iron Interventions in Infants in Rural Bangladesh

S.-R. Pasricha and Others

背景

貧血の頻度が高い低・中所得国では,小児全員への鉄剤(ドロップまたはシロップ)または多種微量栄養素パウダーの提供が世界保健機関に推奨されており,広く実施されている.これらの介入の機能的利益と安全性は明らかにされていない.

方 法

個人単位の二重盲検ダブルダミー無作為化プラセボ対照試験で,バングラデシュ農村部の 8 ヵ月児を対象に,鉄剤シロップまたは鉄含有の多種微量栄養素パウダーを 3 ヵ月間連日投与した場合の短期および中期の利益とリスクを,プラセボと比較評価した.主要転帰は認知機能の発達とし,割り付けられた 3 ヵ月間のレジメン完了直後の Bayley 乳幼児発達検査第 3 版の認知機能複合スコアで評価した.スコアは 55~145 で,高いほど認知機能が良好であることを示す.副次的転帰は,割り付けられたレジメン完了後 9 ヵ月の時点での認知機能複合スコア,レジメン完了直後および完了後 9 ヵ月の時点での行動・言語・運動の発達および成長指標・血液学的指標,安全性などとした.

結 果

3,300 例の乳児を,連日鉄剤シロップを投与する群(1,101 例),多種微量栄養素パウダーを投与する群(1,099 例),プラセボを投与する群(1,100 例)に無作為に割り付けた.割り付けられた 3 ヵ月間のレジメン完了後,プラセボ群と比較して,鉄剤シロップ群には認知機能複合スコアに明らかな効果は認められず(ベースラインからのスコアの変化における群間差の平均 -0.30 ポイント,95%信頼区間 [CI] -1.08~0.48),多種微量栄養素パウダー群にも明らかな効果は認められなかった(ベースラインからのスコアの変化における群間差の平均 0.23 ポイント,95% CI -0.55~1.00).その他の発達・成長転帰についても,レジメンの完了直後および完了後 9 ヵ月の時点で明らかな効果は認められなかった.割り付けられたレジメン完了後 9 ヵ月の時点で,貧血,鉄欠乏症,鉄欠乏性貧血の有病率が 3 群すべてで上昇したが,鉄剤シロップまたは多種微量栄養素パウダーの投与を受けた児のほうがプラセボの投与を受けた児よりも低い点は,レジメン完了直後と変わらなかった.重篤な有害事象のリスクと感染症状の発現率は,3 群で同程度であった.

結 論

バングラデシュの乳児を対象とした試験で,鉄剤シロップまたは多種微量栄養素パウダーの 3 ヵ月間の連日投与は,プラセボと比較して,児の発達およびその他の機能転帰に効果はないと思われた.(オーストラリア国立保健医療研究評議会から研究助成を受けた.BRISC 試験:Australian New Zealand Clinical Trials Registry 番号 ACTRN12617000660381)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 385 : 982 - 95. )