院外心停止後，集中治療を受けている昏睡患者の治療における，特定の血圧目標値を支持するエビデンスは限られている．

2×2 要因デザインを用いた二重盲検無作為化試験で，心原性と推定される院外心停止からの蘇生後，昏睡状態にある成人の平均動脈圧の目標値を，63 mmHg にした場合と 77 mmHg にした場合とを比較評価した．酸素化目標値も 2 つ設定し，患者を割り付けた（別途報告）．主要複合転帰は，90 日以内の全死因死亡と，脳機能カテゴリー（CPC；0～5 で，数値が高いほど障害が重度であることを示す）が 3（重度の障害）または 4（昏睡）での退院とした．副次的転帰は，48 時間の時点での神経特異エノラーゼ値，全死因死亡，3 ヵ月の時点での，モントリオール認知評価（MoCA）スコア（0～30 で，数値が高いほど認知能力が良好であることを示す），修正ランキンスケールスコア（0～6 で，数値が高いほど障害が大きいことを示す），CPC などとした．

解析対象は 789 例（高目標値群 393 例，低目標値群 396 例）であった．主要転帰イベントは，高目標値群の 133 例（34%），低目標値群の 127 例（32%）に発生した（ハザード比 1.08，95%信頼区間 [CI] 0.84～1.37，P＝0.56）．90 日の時点で，高目標値群の 122 例（31%），低目標値群の 114 例（29%）が死亡していた（ハザード比 1.13，95% CI 0.88～1.46）．CPC の中央値は高目標値群も低目標値群も 1（四分位範囲 1～5）であり，修正ランキンスケールスコアの中央値はそれぞれ 1（四分位範囲 0～6），1（四分位範囲 0～6），MoCA スコアの中央値はそれぞれ 27（四分位範囲 24～29），26（四分位範囲 24～29）であった．48 時間の時点での神経特異エノラーゼ値の中央値も，2 群で同程度であった．有害事象が発現した患者の割合に群間で有意差は認められなかった．

心停止から蘇生した患者において，平均動脈圧の目標値を 77 mmHg にしても 63 mmHg にしても，死亡する割合と，重度の障害または昏睡の状態にある割合に有意差は認められなかった．（ノボ ノルディスク財団から研究助成を受けた．BOX 試験：ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03141099）