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December 1, 2022 Vol. 387 No. 22

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パーキンソン病に対するデフェリプロンの試験
Trial of Deferiprone in Parkinson’s Disease

D. Devos and Others

背景

パーキンソン病患者では黒質の鉄が増加しており,この疾患の病態生理に寄与している可能性がある.初期の研究で,鉄キレート剤デフェリプロン(deferiprone)がパーキンソン病患者の黒質線条体の鉄を減少させる可能性が示されているが,病勢進行に対する効果は明らかにされていない.

方 法

新たにパーキンソン病と診断され,レボドパの投与を受けたことがない参加者を対象として,多施設共同第 2 相無作為化二重盲検試験を行った.参加者を,デフェリプロン 15 mg/kg 体重を 1 日 2 回,36 週間経口投与する群と,マッチさせたプラセボを投与する群に(1:1 の割合で)割り付けた.ドパミン作動薬による治療は,症状コントロールに必要と考えられる場合を除いて見合わせた.主要転帰は,36 週の時点での,「パーキンソン病統一スケール・運動障害疾患学会改訂版(MDS-UPDRS)」の総スコア(0~260 で,数値が高いほど障害が重度であることを示す)の変化量とした.副次的転帰と探索的臨床転帰は,運動障害の指標,非運動障害の指標などとし,最長で 40 週の時点で評価した.MRI を用いて測定した脳内鉄量も探索的転帰とした.

結 果

372 例が組み入れられ,186 例がデフェリプロン群,186 例がプラセボ群に割り付けられた.デフェリプロン群の参加者の 22.0%とプラセボ群の参加者の 2.7%が,症状の進行によりドパミン作動薬による治療を開始した.ベースライン時の MDS-UPDRS の総スコアの平均は,デフェリプロン群で 34.3,プラセボ群で 33.2 であり,それぞれ 15.6 ポイントと 6.3 ポイント増加(悪化)した(差 9.3 ポイント,95%信頼区間 6.3~12.2,P<0.001).黒質線条体における鉄の減少は,デフェリプロン群のほうがプラセボ群よりも大きかった.デフェリプロンによる主な重篤な有害事象は,無顆粒球症 2 例,好中球減少症 3 例であった.

結 論

早期パーキンソン病で,レボドパの投与を受けたことがなく,ドパミン作動薬による治療が計画されなかった参加者において,デフェリプロンは,36 週の期間中,プラセボよりもパーキンソニズムの指標スコアがわるいことに関連した.(欧州連合ホライズン 2020 プログラムから研究助成を受けた.FAIRPARK-II 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02655315)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 387 : 2045 - 55. )