September 15, 2022 Vol. 387 No. 11
急性膵炎に対する積極的輸液と適量輸液との比較
Aggressive or Moderate Fluid Resuscitation in Acute Pancreatitis
E. de-Madaria and Others
急性膵炎の管理には,早期の積極的輸液が広く推奨されているが,この方法のエビデンスは限られている.
18 施設で,急性膵炎の患者を,乳酸リンゲル液を用いて目標指向型の積極的輸液を行う群と,適量輸液を行う群に無作為に割り付けた.積極的輸液では,20 mL/kg 体重をボーラス投与し,その後 3 mL/kg/時を投与した.適量輸液では,血液量減少を認める患者には 10 mL/kg をボーラス投与し,正常血液量の患者にはボーラス投与を行わず,その後,全例に 1.5 mL/kg/時を投与した.12,24,48,72 時間の時点で患者を評価し,患者の臨床状態に基づいて輸液を調整した.主要転帰は,入院中の中等症または重症の膵炎の発生とした.主な安全性転帰は循環血液量過剰とした.サンプルサイズは 744 例で,248 例を組み入れたあと,最初の中間解析を行う予定とした.
249 例が中間解析の対象となった.安全性転帰に群間差が認められ,中等症または重症の膵炎の発生率に有意差が認められなかったことから(積極的輸液群 22.1%,適量輸液群 17.3%,補正相対リスク 1.30,95%信頼区間 [CI] 0.78~2.18,P=0.32),試験は中止された.循環血液量過剰は,積極的輸液群の 20.5%と適量輸液群の 6.3%に発現した(補正相対リスク 2.85,95% CI 1.36~5.94,P=0.004).入院期間の中央値は,積極的輸液群で 6 日(四分位範囲 4~8),適量輸液群で 5 日(四分位範囲 3~7)であった.
急性膵炎患者を対象とした今回の無作為化試験で,早期の積極的輸液を行っても臨床転帰が改善することはなく,循環血液量過剰の発現率が高くなった.(カルロス 3 世保健研究所ほかから研究助成を受けた.WATERFALL 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号NCT04381169)