大・中血管の閉塞を伴わない脳梗塞に対するチロフィバン
Tirofiban for Stroke without Large or Medium-Sized Vessel Occlusion
W. Zi and Others
大・中血管の完全閉塞を伴わない急性期脳梗塞患者に対する糖蛋白 IIb/IIIa 受容体阻害薬チロフィバン(tirofiban)の効果について,広範な検討はなされていない.
中国の多施設共同試験で,大・中血管の閉塞を伴わない脳梗塞を有し,米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)スコアが 5 以上で,1 肢以上に中等度~重度の脱力を有する患者を組み入れた.次の 4 つの臨床状態のいずれかに該当する患者を適格とした:血栓溶解療法,血栓回収療法の適応がなく,最後に健常であることが確認された時点から 24 時間以内である;発症後 24~96 時間の時点で脳梗塞症状の進行を認める;血栓溶解療法後早期に神経症状の増悪を認める;血栓溶解療法後 4~24 時間の時点で神経症状の改善がみられない.患者を,チロフィバン静脈内投与(+プラセボ経口投与)群と,アスピリン(100 mg/日)経口投与(+プラセボ静脈内投与)群に割り付け,2 日間投与した.その後,全例に 90 日目までアスピリンを経口投与した.主要有効性エンドポイントは 90 日の時点での非常に良好な転帰とし,修正ランキンスケールスコア(0 [症状なし]~6 [死亡])が 0 または 1 であることと定義した.副次的エンドポイントは,90 日の時点での機能的自立,QOL スコアなどとした.主要安全性エンドポイントは,死亡と症候性頭蓋内出血とした.
606 例がチロフィバン群,571 例がアスピリン群に割り付けられた.患者の大部分が,アテローム性動脈硬化性と推定される小梗塞を有していた.90 日の時点で修正ランキンスケールスコアが 0 または 1 であった患者の割合は,チロフィバン群 29.1%,アスピリン群 22.2%であった(補正リスク比 1.26,95%信頼区間 1.04~1.53,P=0.02).副次的エンドポイントの結果は,大部分が主要解析の結果と一致しなかった.死亡率は 2 群で同程度であった.症候性頭蓋内出血の発現率はチロフィバン群 1.0%,アスピリン群 0%であった.
脳梗塞の発症後または脳梗塞症状の進行後まもない,大・中脳血管の閉塞を伴わない患者から成る不均一な集団を対象とした試験で,チロフィバンの静脈内投与は,低用量のアスピリン投与と比較して,非常に良好な転帰が得られる可能性が高いことと関連した.頭蓋内出血の発現率は両群とも低かったが,チロフィバン群のほうがわずかに高かった.(中国国家自然科学基金から研究助成を受けた.RESCUE BT2 試験:Chinese Clinical Trial Registry 番号 ChiCTR2000029502)