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January 26, 2023 Vol. 388 No. 4

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人種と性別を含めないシスタチン C 値に基づく糸球体濾過量推算式
Cystatin C–Based Equation to Estimate GFR without the Inclusion of Race and Sex

H. Pottel and Others

背景

血清クレアチニン値の測定などの,ルーチンの代謝検査を用いた腎機能の推定の精度については議論が続いている.欧州腎機能コンソーシアム(EKFC)は,調整血清クレアチニン値(年齢,性別,人種の差によるばらつきを制御する目的で,健康な人の血清クレアチニン値の中央値で除した血清クレアチニン値)を用いて糸球体濾過量(GFR)を推算する,クレアチニン値に基づく式(EKFC eGFRcr)を開発した.シスタチン C 値に基づく推算式(EKFC eGFRcys 式)により,推算 GFR の精度が向上するかどうかは明らかにされていない.

方 法

スウェーデンの患者のデータを用いて,成人のシスタチン C 値の調整係数を推定した.その後,EKFC eGFRcr 式の調整血清クレアチニン値を調整シスタチン C 値に置き換え,得られた EKFC eGFRcys 式の妥当性を,欧州,米国,アフリカの白人患者と黒人患者のコホートにおいて,実測 GFR,血清クレアチニン値,シスタチン C 値,年齢,性別に基づく式と比較検証した.

結 果

スウェーデンの患者 227,643 例のデータに基づき,シスタチン C 値の調整係数は 50 歳未満の男女が 0.83,50 歳以上の男女が 0.83+0.005×(年齢-50)と推定された.EKFC eGFRcys 式は,偏りがなく,白人患者と黒人患者の両方(欧州 11,231 例,米国 1,093 例,アフリカ 508 例)において EKFC eGFRcr 式と同程度の精度であり,国際腎臓病ガイドライン機構(KDIGO)が推奨する慢性腎臓病疫学共同研究(CKD-EPI)の eGFRcys 式よりも精度が高かった.EKFC eGFRcr と EKFC eGFRcys の算術平均では,いずれかのバイオマーカーに基づく推算値よりも,推算 GFR の精度がさらに向上した.

結 論

EKFC eGFRcys 式は,EKFC eGFRcr 式と同じ数式であるが,人種や性別によって異なることのないシスタチン C 値の調整係数を用いたものである.欧州,米国,アフリカのコホートにおいて,この推算式は,一般的に用いられている推算式よりも GFR 評価の精度を向上させた.(スウェーデン研究評議会から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 388 : 333 - 43. )