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September 28, 2023 Vol. 389 No. 13

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エリトリアにおけるアルテミシニン耐性 HRP2 陰性マラリアの有病率の増加
Increasing Prevalence of Artemisinin-Resistant HRP2-Negative Malaria in Eritrea

S. Mihreteab and Others

背景

アフリカでは,抗マラリア薬のアルテミシニンを主体とした併用療法の臨床的有効性は依然として高いが,最近,アフリカ大陸でアルテミシニンに部分耐性をもつ熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)が出現していることは,代わりの治療法がないことを考えると問題である.

方 法

この研究では,エリトリアで 2016~19 年に行われた,合併症のないマラリアに対するアルテミシニン主体の併用療法(アルテスナート [artesunate]+アモジアキン [amodiaquine] またはアルテメテル+ルメファントリン)の 3 日間のコースを評価した有効性試験のデータを用いて,3 日目に陽性(すなわち,治療開始後 3 日の時点で持続する熱帯熱マラリア原虫血症)であった患者の割合を推定した.寄生虫に対しては,アルテミシニン部分耐性の予測マーカーとして Pfkelch13 の変異を検索し,また,ヒスチジンリッチプロテイン 2(HRP2)に基づくマラリアの迅速診断検査の精度をばらつかせる hrp2 の欠失と hrp3 の欠失をスクリーニングした.

結 果

3 日目に陽性であった患者の割合は,2016 年の 0.4%(273 例中 1 例)から,2017 年には 1.9%(209 例中 4 例)に増加し,2019 年には 4.2%(359 例中 15 例)に増加したことが認められた.研究期間中に,治療前の分離株 818 株中 109 株で Pfkelch13 R622I 変異が検出され,この保有率も,2016 年の 8.6%(278 株中 24 株)から,2019 年には 21.0%(329 株中 69 株)に増加したことが認められた.Pfkelch13 622I バリアントを有する寄生虫に感染した患者では,3 日目に陽性となるオッズが 6.2 倍(95%信頼区間 2.5~15.5)であった.世界保健機関の定義によるアルテミシニン部分耐性が,エリトリアで観察された.3 日目に陽性であった 15 歳未満の患者では,5%超が Pfkelch13 R622I を有する寄生虫に感染していた.R622I 変異は,in vitro で NF54 株と Dd2 株に遺伝子編集で導入すると,アルテミシニンに対して低いレベルの耐性をもたらした.hrp2hrp3 の両方の欠失が,Pfkelch13 R622I 変異を有する寄生虫の 16.9%で検出された.これにより,HRP2 に基づく迅速診断検査で寄生虫の検出が不能になった可能性がある.

結 論

エリトリアで,Pfkelch13 が介在するアルテミシニン部分耐性と,hrp2 および hrp3 の欠失という 2 つの特性を有する熱帯熱マラリア原虫系統が出現し,拡大していることは,地域のマラリア対策と根絶運動を脅かす恐れがある.(ビル&メリンダ・ゲイツ財団ほかから研究助成を受けた.Australian New Zealand Clinical Trials Registry 番号 ACTRN12618001223224,ACTRN12618000353291,ACTRN12619000859189)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 1191 - 202. )