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October 26, 2023 Vol. 389 No. 17

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トランスサイレチン心アミロイドーシス患者に対するパチシランによる治療
Patisiran Treatment in Patients with Transthyretin Cardiac Amyloidosis

M.S. Maurer and Others

背景

トランスサイレチンアミロイドーシスは,ATTR アミロイドーシスとも呼ばれ,心臓に ATTR アミロイドが沈着することと関連し,多くの場合進行性心筋症で発症する.RNA 干渉治療薬パチシランは,肝臓におけるトランスサイレチン産生を阻害する.

方 法

第 3 相二重盲検無作為化試験で,遺伝性(変異型としても知られる)または野生型の ATTR 心アミロイドーシス患者を,パチシラン(0.3 mg/kg 体重)を 3 週間に 1 回,12 ヵ月間投与する群と,プラセボを投与する群に 1:1 の割合で割り付けた.階層的手法を用いて,主要エンドポイントと 3 つの副次的エンドポイントを検討した.主要エンドポイントは,12 ヵ月の時点での 6 分間歩行試験における歩行距離のベースラインからの変化量とした.第 1 副次的エンドポイントは,カンザスシティ心筋症質問票の全体サマリー(KCCQ-OS)スコア(数値が高いほど健康状態が良好であることを示す)のベースラインから 12 ヵ月目までの変化量とした.第 2 副次的エンドポイントは,12 ヵ月間の全死因死亡,心血管イベント,6 分間歩行距離のベースラインからの変化量の複合とした.第 3 副次的エンドポイントは,12 ヵ月間の全死因死亡,あらゆる原因による入院,心不全による緊急受診の複合とした.

結 果

360 例を,パチシラン群(181 例)とプラセボ群(179 例)に無作為に割り付けた.12 ヵ月の時点での 6 分間歩行距離の減少量は,パチシラン群のほうがプラセボ群よりも小さかった(ホッジス–レーマン推定差の中央値 14.69 m,95%信頼区間 [CI] 0.69~28.69,P=0.02).KCCQ-OS スコアは,パチシラン群では上昇し,プラセボ群では低下した(最小二乗平均差 3.7 ポイント,95% CI 0.2~7.2,P=0.04).第 2 副次的エンドポイントに有意な利益は認められなかった.パチシラン群で,プラセボ群よりも頻度が高かった有害事象は,注入に伴う反応(インフュージョンリアクション),関節痛,筋痙攣であった.

結 論

この試験では,ATTR 心アミロイドーシス患者に対する 12 ヵ月間のパチシラン投与により,機能的能力が維持された.(アルナイラム ファーマシューティカルズ社から研究助成を受けた.APOLLO-B 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03997383)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 1553 - 65. )