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November 16, 2023 Vol. 389 No. 20

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早期アルツハイマー病に対するガンテネルマブの 2 件の第 3 相試験
Two Phase 3 Trials of Gantenerumab in Early Alzheimer’s Disease

R.J. Bateman and Others

背景

アミロイドβ(Aβ)を標的とするモノクローナル抗体は,早期アルツハイマー病者の認知機能低下と身体機能低下を抑制する可能性がある.ガンテネルマブ(gantenerumab)は,皮下投与する,Aβ凝集体との親和性がきわめて高い完全ヒト抗 Aβ IgG1 モノクローナル抗体で,アルツハイマー病の治療薬として検討されている.

方 法

アルツハイマー病による軽度認知障害または軽度認知症を有し,陽電子放射断層撮影(PET)または脳脊髄液(CSF)検査でアミロイド斑を認める 50~90 歳の人を対象として,2 件の第 3 相試験(GRADUATE I,II)を行った.参加者を,ガンテネルマブを 2 週間隔で投与する群と,プラセボを投与する群に無作為に割り付けた.主要転帰は,116 週の時点での臨床認知症評価尺度・6 項目合計(CDR-SB)スコア(0~18 で,数値が高いほど認知障害が大きいことを示す)のベースラインからの変化量とした.

結 果

GRADUATE I 試験には 985 例,GRADUATE II 試験には 980 例が組み入れられた.ベースラインの CDR-SB スコアは,GRADUATE I 試験の参加者で 3.7,GRADUATE II 試験の参加者で 3.6 であった.116 週の時点での CDR-SB スコアのベースラインからの変化量は,GRADUATE I 試験ではガンテネルマブ群 3.35,プラセボ群 3.65(差 -0.31,95%信頼区間 [CI] -0.66~0.05,P=0.10)であり,GRADUATE II 試験ではガンテネルマブ群 2.82,プラセボ群 3.01(差 -0.19,95% CI -0.55~0.17,P=0.30)であった.116 週の時点で,ガンテネルマブ群とプラセボ群における PET 上のアミロイド量の差は,GRADUATE I 試験で -66.44 センチロイド,GRADUATE II 試験で -56.46 センチロイドであり,アミロイド陰性状態は,GRADUATE I 試験でガンテネルマブの投与を受けた参加者の 28.0%と,GRADUATE II 試験でガンテネルマブの投与を受けた参加者の 26.8%で達成された.いずれの試験でも,ガンテネルマブの投与を受けた参加者は,プラセボの投与を受けた参加者よりも CSF 中のリン酸化タウ 181 濃度が低く,Aβ42 濃度が高かったが,PET 上でのタウ凝集体の蓄積は 2 群で同程度であった.ガンテネルマブの投与を受けた参加者の 24.9%に浮腫を伴うアミロイド関連画像異常(ARIA-E)が発生し,5.0%に症候性 ARIA-E が発生した.

結 論

早期アルツハイマー病者にガンテネルマブを使用した場合,プラセボと比較して 116 週の時点でのアミロイド斑量が低かったが,臨床的悪化の抑制とは関連しなかった.(エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社から研究助成を受けた.GRADUATE I 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03444870,GRADUATE II 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03443973)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 1862 - 76. )