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November 30, 2023 Vol. 389 No. 22

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血行動態が不安定な脳死心ドナーに対するレボチロキシンの静脈内投与
Intravenous Levothyroxine for Unstable Brain-Dead Heart Donors

R. Dhar and Others

背景

血行動態不安定と心機能障害は,脳死臓器ドナーからの心臓移植を妨げる主な要因である.甲状腺ホルモン補充を受けたドナーからは,より多くの臓器が移植される可能性があることを示唆する観察データがあることから,ドナーのケアにおいてはレボチロキシンの静脈内投与が広く行われている.

方 法

米国の 15 の臓器斡旋機関で行った試験で,血行動態が不安定な,心臓を提供できる可能性があるドナーを,神経学的基準に基づく死亡宣告後 24 時間以内に,非盲検下でレボチロキシンを(30 μg/時で 12 時間以上)点滴静注する群と,プラセボとして生理食塩水を投与する群に無作為に割り付けた.主要転帰はドナー心の移植とし,移植後 30 日の時点での移植心生着を,レシピエントの安全性転帰として事前に規定した.副次的転帰は,昇圧薬からの離脱,ドナーの駆出率,ドナー 1 例あたりの移植臓器数などとした.

結 果

無作為化された脳死ドナー 852 例のうち,838 例を主要解析の対象とした.内訳はレボチロキシン群 419 例,生理食塩水群 419 例であった.レボチロキシン群の 230 例(54.9%),生理食塩水群の 223 例(53.2%)の心臓が移植された(補正リスク比 1.01,95%信頼区間 [CI] 0.97~1.07,P=0.57).30 日の時点での移植心生着は,レボチロキシン群に割り付けられたドナーから移植された心臓 224 個(97.4%),生理食塩水群に割り付けられたドナーから移植された心臓 213 個(95.5%)で得られた(差 1.9 パーセントポイント,95% CI -2.3~6.0,マージン 6 パーセントポイントでの非劣性の P<0.001).昇圧薬からの離脱,心エコーでの駆出率,ドナー 1 例あたりの移植臓器数に大きな群間差はなかったが,レボチロキシン群では,重症高血圧と頻拍の症例が生理食塩水群よりも多く認められた.

結 論

血行動態が不安定な,心臓を提供できる可能性がある脳死ドナーにレボチロキシンの点滴静注を行っても,生理食塩水の投与と比較して,移植される心臓が有意に多くなることはなかった.(ミッドアメリカ トランスプラントほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04415658)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 2029 - 38. )