好酸球数に示される 2 型炎症を伴う慢性閉塞性肺疾患に対するデュピルマブ
Dupilumab for COPD with Type 2 Inflammation Indicated by Eosinophil Counts
S.P. Bhatt and Others
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の一部は,2 型炎症により増悪リスクが上昇する可能性があり,血中好酸球数の増加が 2 型炎症を示すと考えられている.完全ヒト化モノクローナル抗体であるデュピルマブは,2 型炎症に重要な役割を果たすインターロイキン-4 とインターロイキン-13 が共有する受容体の構成要素を阻害する.
第 3 相二重盲検無作為化試験で,血中好酸球数が 300/μL 以上で,標準的な 3 剤併用療法を行っても増悪リスクが高い COPD 患者を,デュピルマブ(300 mg)を 2 週間隔で皮下投与する群と,プラセボを投与する群に割り付けた.主要エンドポイントは,中等度または重度の COPD 増悪の年間発生率とした.重要な副次的エンドポイントおよびその他のエンドポイントは,気管支拡張薬吸入前の 1 秒量(FEV1)の変化量,セントジョージ呼吸器質問票(SGRQ)のスコア(0~100 で,数値が低いほど QOL が良好であることを示す)の変化量,COPD 呼吸器症状評価(E-RS–COPD)のスコア(0~40 で,数値が低いほど症状の重症度が低いことを示す)の変化量とし,多重性を補正して解析した.
939 例が無作為化され,468 例がデュピルマブ群,471 例がプラセボ群に割り付けられた.中等度または重度の増悪の年間発生率は,デュピルマブ群 0.78(95%信頼区間 [CI] 0.64~0.93),プラセボ群 1.10(95% CI 0.93~1.30)であった(率比 0.70,95% CI 0.58~0.86,P<0.001).気管支拡張薬吸入前の FEV1 の最小二乗(LS)平均値は,ベースラインから 12 週までに,デュピルマブ群では 160 mL(95% CI 126~195)増加し,プラセボ群では 77 mL(95% CI 42~112)増加し(LS 平均の差 83 mL,95% CI 42~125,P<0.001),この差は 52 週の時点まで持続した.52 週の時点での SGRQ スコアの LS 平均値は,デュピルマブ群では -9.7(95% CI -11.3~-8.1)改善し,プラセボ群では -6.4(95% CI -8.0~-4.8)改善していた(LS 平均の差 -3.4,95% CI -5.5~-1.3,P=0.002).52 週の時点での E-RS–COPD スコアの LS 平均値は,デュピルマブ群では -2.7(95% CI -3.2~-2.2)改善し,プラセボ群では -1.6(95% CI -2.1~-1.1)改善していた(LS 平均の差 -1.1,95% CI -1.8~-0.4,P=0.001).デュピルマブまたはプラセボの中止にいたった有害事象,重篤な有害事象,死亡にいたった有害事象が発現した患者数は,2 群で同程度であった.
血中好酸球数の増加に示される 2 型炎症を伴う COPD 患者のうち,デュピルマブの投与を受けた患者では,プラセボの投与を受けた患者と比較して増悪が少なく,肺機能と QOL が良好で,呼吸器症状の重症度が低かった.(サノフィ社,リジェネロン ファーマシューティカルズ社から研究助成を受けた.BOREAS 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03930732)