The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

December 28, 2023 Vol. 389 No. 26

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

脳梗塞発症後 72 時間以内の抗血小板薬 2 剤併用療法
Dual Antiplatelet Treatment up to 72 Hours after Ischemic Stroke

Y. Gao and Others

背景

抗血小板薬 2 剤併用療法は,急性軽症脳梗塞の発症後早期(24 時間以内)に開始した場合に,アスピリン単剤療法を開始した場合と比較して,脳梗塞の再発リスクを低下させることが示されている.アテローム性動脈硬化による急性脳虚血の発症後 72 時間以内に開始するクロピドグレル+アスピリンの効果が,アスピリン単剤と比較してどうかは十分に研究されていない.

方 法

中国の 222 の病院で,アテローム性動脈硬化が原因と推定される軽症脳梗塞または高リスク一過性脳虚血発作(TIA)を発症し,血栓溶解療法または血栓回収療法を受けていなかった患者を対象として,二重盲検無作為化プラセボ対照 2×2 要因試験を行った.発症後 72 時間以内に,患者を,クロピドグレル(1 日目 300 mg,2~90 日目 75 mg/日)+アスピリン(1 日目 100~300 mg,2~21 日目 100 mg/日)を投与する群と,マッチさせたクロピドグレルのプラセボ+アスピリン(1 日目 100~300 mg,2~90 日目 100 mg/日)を投与する群に,1:1 の割合で無作為に割り付けた.この要因と,スタチンの即時投与と待期的投与というもう一つの要因(本稿では報告しない)とのあいだに交互作用はなかった.主要有効性転帰は脳卒中の新規発症,主要安全性転帰は中等度~重度の出血とし,いずれも 90 日以内に評価した.

結 果

6,100 例が組み入れられ,各群に 3,050 例が割り付けられた.患者の 13.1%では組入れ対象イベントが TIA であった.治療群への割付けは,12.8%が脳梗塞発症後 24 時間以内,87.2%が発症後 24 時間超 72 時間以内であった.脳卒中の新規発症は,クロピドグレル+アスピリン群では 222 例(7.3%),アスピリン群では 279 例(9.2%)あった(ハザード比 0.79,95%信頼区間 [CI] 0.66~0.94,P=0.008).中等度~重度の出血は,クロピドグレル+アスピリン群では 27 例(0.9%),アスピリン群では 13 例(0.4%)に発生した(ハザード比 2.08,95% CI 1.07~4.04,P=0.03).

結 論

アテローム性動脈硬化が原因と推定される軽症脳梗塞または高リスク TIA を発症した患者において,発症後 72 時間以内に開始するクロピドグレル+アスピリン併用療法により,90 日の時点での脳卒中の新規発症リスクはアスピリン単剤療法よりも低くなったが,中等度~重度の出血のリスクが,数値としては低かったものの,アスピリン単剤療法よりも高くなった.(中国国家自然科学基金委員会ほかから研究助成を受けた.INSPIRES 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03635749)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 2413 - 24. )