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August 3, 2023 Vol. 389 No. 5

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双極 I 型障害の抑うつに対する維持療法における抗うつ薬の補助的投与期間
Duration of Adjunctive Antidepressant Maintenance in Bipolar I Depression

L.N. Yatham and Others

背景

双極 I 型障害患者では,急性の抑うつの治療に抗うつ薬が用いられるが,抑うつ寛解後の維持療法としての効果は十分に研究されていない.

方 法

抑うつエピソードが寛解してまもない双極 I 型障害患者を対象として,エスシタロプラムまたはブプロピオン XL(bupropion XL)を補助的に投与する維持療法を,抗うつ薬療法中止と比較する多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行った.患者を,寛解後 52 週間抗うつ薬の投与を継続する群と,8 週の時点でプラセボに切り替える群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要転帰はすべての気分エピソードとし,生存時間(time-to-event)解析で評価した.その定義は,症状評価尺度スコアに基づく軽躁,躁,抑うつ,自殺リスク,気分エピソードの重症度;気分症状に対する追加の治療または入院;自殺企図または自殺死亡とした.重要な副次的転帰は,躁/軽躁エピソードまでの期間,抑うつエピソードまでの期間などとした.

結 果

非盲検投与期に参加した双極 I 型障害患者 209 例のうち,抑うつが寛解した 150 例が,直接組み入れられた 27 例とともに二重盲検期に組み入れられた.90 例が処方された抗うつ薬の投与を 52 週間継続する群(52 週群)に割り付けられ,87 例が 8 週の時点でプラセボに切り替える群(8 週群)に割り付けられた.登録が進まなかったことと研究費の限界のため,試験は募集人数に達する前に中止された.52 週の時点で,主要転帰のイベントは 52 週群の 28 例(31%)と 8 週群の 40 例(46%)に生じていた.52 週群の,8 週群に対するすべての気分エピソードを発症するまでの期間のハザード比は,0.68(95%信頼区間 [CI] 0.43~1.10,log-rank 検定で P=0.12)であった.躁/軽躁エピソードは,52 週群では 11 例(12%)に発生したのに対し,8 週群では 5 例(6%)であり(ハザード比 2.28,95% CI 0.86~6.08),抑うつエピソードの再発は,52 週群では 15 例(17%)に認められたのに対し,8 週群では 35 例(40%)であった(ハザード比 0.43,95% CI 0.25~0.75).有害事象の発現率は 2 群で同程度であった.

結 論

抑うつエピソードが寛解してまもない双極 I 型障害患者を対象とした試験において,エスシタロプラムまたはブプロピオン XL の補助的投与を 52 週間継続しても,8 週間投与した場合と比較して,すべての気分エピソードの再発予防における有意な利益は認められなかった.登録が進まなかったことと研究費の限界のため,試験は早期に中止された.(カナダ健康研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00958633)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 430 - 40. )