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August 24, 2023 Vol. 389 No. 8

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ウガンダにおけるマラリア原虫のアルテミシニンに対する部分耐性の進化
Evolution of Partial Resistance to Artemisinins in Malaria Parasites in Uganda

M.D. Conrad and Others

背景

アルテミシニンを主体とした併用療法は重要なマラリア治療薬で構成されるが,そのアルテミシニン成分に対する熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の部分耐性が東南アジアで出現し,現在東アフリカを脅かしている.部分耐性は,治療後のクリアランスの遅延として現れるが,主に kelch 蛋白 K13(PfK13)の変異が介在している.アフリカにおけるアルテミシニン耐性の出現と拡大について,入手可能な縦断データは限られている.

方 法

2016~22 年に,ウガンダ全土の 10~16 施設において,合併症のないマラリアで受診した患者を対象に年 1 回のサーベイランスを実施した.kelch 13 をコードする遺伝子(pfk13)の配列を決定し,分子的手法を用いて関連を解析した.ウガンダの 8 つの県で,マラリアの測定指標を,2014~21 年に縦断的に評価した.

結 果

確認されている耐性マーカー,または耐性マーカー候補を有する寄生虫の保有率は,サーベイランスが実施された 16 県中 11 県で,2021–2022 年までに 20%を超えた.PfK13 の 469Y 変異と 675V 変異は,2016–2017 年にウガンダの最北部で認められたものであるが,その後増加,拡大し,ウガンダ北部の大部分で 2 つを合わせた保有率は 10~54%に達し,ほかの地域にも拡大した.469F 変異は,ウガンダ南西部の 1 県で,2021–2022 年に保有率が 38~40%に達した.561H 変異は,過去にルワンダで報告されたものであるが,2021 年にウガンダ南西部ではじめて認められ,2022 年に保有率は 23%に達した.441L 変異は,ウガンダ西部の 3 県で,2022 年に保有率が 12~23%に達した.遺伝子解析により,変異をもつ寄生虫の局地的な出現は,東南アジアにおける出現とは独立したものであることが示された.耐性の出現は,有効なマラリア対策が中止されていた地区や,伝播に変動があった地区で主に観察された.

結 論

ウガンダからのデータは,アルテミシニンに対する部分耐性が複数の地理的位置で出現し,経時的に保有率が増加し,ほかの地域に拡大したことを示した.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 722 - 32. )