超急性期脳卒中に対する救急車内での積極的降圧
Intensive Ambulance-Delivered Blood-Pressure Reduction in Hyperacute Stroke
G. Li and Others
急性期脳卒中の,虚血性か出血性かを鑑別する前の治療は複雑な問題である.救急車内という,非常に早期に血圧をコントロールすることで,鑑別前の急性期脳卒中患者の転帰が改善するかどうかは明らかでない.
運動障害を伴った,急性期脳卒中が疑われる患者で,収縮期血圧の上昇(150 mmHg 以上)を認め,発症後 2 時間以内に救急車内で評価を受けた例を,ただちに収縮期血圧を下げる治療(目標の範囲 130~140 mmHg)を行う群(介入群)と,病院到着時に血圧管理を行う群(通常対応群)に無作為に割り付けた.主要有効性転帰は機能状態とし,無作為化後 90 日の時点での修正ランキンスケールスコア(範囲 0 [症状なし]~6 [死亡])により評価した.主要安全性転帰は重篤な有害事象とした.
中国で,2,404 例(平均年齢 70 歳)が無作為化され,試験参加に同意した.内訳は介入群 1,205 例,通常対応群 1,199 例であった.発症から無作為化までの時間の中央値は 61 分(四分位範囲 41~93)であり,無作為化時の平均血圧は 178/98 mmHg であった.その後,画像検査により 2,240 例で脳卒中が確認され,うち 1,041 例(46.5%)が脳出血であった.病院到着時の平均収縮期血圧は,介入群では 159 mmHg であったのに対し,通常対応群では 170 mmHg であった.全体では,機能的転帰に 2 群間で差はなく(共通オッズ比 1.00,95%信頼区間 [CI] 0.87~1.15),重篤な有害事象の発現率は 2 群で同程度であった.病院到着前の降圧は,脳出血患者では機能的転帰不良を示すオッズの低下と関連したが(共通オッズ比 0.75,95% CI 0.60~0.92),脳虚血患者では上昇と関連した(共通オッズ比 1.30,95% CI 1.06~1.60).
この試験では,虚血性か出血性かの鑑別前の患者コホートに対する病院到着前の降圧は,急性期脳卒中の機能的転帰を改善しなかった.患者の 46.5%はその後脳出血と診断された.(オーストラリア国立保健医療研究評議会ほかから研究助成を受けた.INTERACT4 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03790800,Chinese Trial Registry 番号 ChiCTR1900020534)