多腺性自己免疫症候群 1 型におけるインターフェロンγの役割
The Role of Interferon-γ in Autoimmune Polyendocrine Syndrome Type 1
V. Oikonomou and Others
多腺性自己免疫症候群 1 型(APS-1)は,自己免疫調節因子(AIRE)の欠損に起因する,生命を脅かす常染色体潜性症候群である.APS-1 では,自己反応性 T 細胞が胸腺での負の選択(ネガティブセレクション)を免れ,臓器に浸潤し,自己免疫障害を惹起する.APS-1 における,T 細胞を介した損傷を制御するエフェクター機構は,依然として十分に解明されていない.
APS-1 がインターフェロンγを介する疾患に分類されるかを検討した.まず,前向き自然歴研究に参加していた APS-1 患者を評価し,血液および組織中の mRNA と蛋白の発現を評価した.次に,Aire-/-Ifng-/- マウスと,ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬ルキソリチニブで処理した Aire-/- マウスを用いて,インターフェロンγの病因としての役割を検討した.その知見に基づき,APS-1 患者 5 例にルキソリチニブによる治療を行い,臨床反応,免疫学的反応,組織学的反応,転写の反応,自己抗体反応を評価した.
APS-1 患者では,血液,および自己免疫の影響を受けた,検査したすべての組織において,インターフェロンγ応答が増強していた.Aire-/- マウスでは,T 細胞によるインターフェロンγの産生が選択的に増加し,複数の臓器で,インターフェロンγ,リン酸化シグナル伝達兼転写活性化因子 1(pSTAT1),CXCL9 のシグナルが増強していた.Aire-/- マウスにおける Ifng の除去またはルキソリチニブによる JAK–STAT の遮断は,インターフェロンγ応答を正常化し,臓器への T 細胞浸潤と臓器損傷を回避した.APS-1 患者 5 例に行ったルキソリチニブ治療により,T 細胞由来のインターフェロンγのレベルが減少し,インターフェロンγと CXCL9 のレベルが正常化し,脱毛症,口腔カンジダ症,爪異栄養症,胃炎,腸炎,関節炎,シェーグレン様症候群,蕁麻疹,甲状腺炎が寛解した.これらの患者では,ルキソリチニブによる重篤な有害作用は確認されなかった.
今回の知見により,AIRE の欠損に起因する APS-1 は,多臓器におけるインターフェロンγを介する応答の過剰を特徴とすることが示された.患者 5 例に行った,ルキソリチニブによる JAK 阻害の結果は有望であった.(米国国立アレルギー・感染症研究所ほかから研究助成を受けた.)