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October 10, 2024 Vol. 391 No. 14

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大脳型副腎白質ジストロフィーに対する遺伝子治療後の造血器腫瘍
Hematologic Cancer after Gene Therapy for Cerebral Adrenoleukodystrophy

C.N. Duncan and Others

背景

エリバルドジーン オートテムセル(elivaldogene autotemcel [eli-cel])は,ABCD1 の相補的 DNA を含有するレンチウイルスベクター(Lenti-D)で形質導入した自家 CD34 陽性細胞を用いた遺伝子治療であり,大脳型副腎白質ジストロフィー治療の臨床試験で有効性を示している.しかし,eli-cel に伴う発癌リスクは不明である.

方 法

完了した 2 件の第 2~3 相試験(ALD-102,ALD-104)と,この 2 試験の患者を対象に進行中の追跡試験(LTF-304)で eli-cel 療法を受けた患者の末梢血検体と骨髄検体を用いて,組込み部位解析,遺伝学的研究,フローサイトメトリー,形態学的研究を行った.

結 果

造血器腫瘍は,eli-cel 投与を受けた 67 例中 7 例(ALD-102 試験の 32 例中 1 例,ALD-104 試験の 35 例中 6 例)に発生した.内訳は,単一血球系統の異形成を伴う骨髄異形成症候群(MDS)が 2 例に 14 ヵ月,26 ヵ月の時点で発生し,芽球増加を伴う MDS が 3 例に 28 ヵ月,42 ヵ月,92 ヵ月の時点で発生し,MDS が 1 例に 36 ヵ月の時点で発生し,急性骨髄性白血病(AML)が 1 例に 57 ヵ月の時点で発生した.データを入手しえた 6 例では,レンチウイルスベクターの挿入が優勢クローンの複数の遺伝子座に認められ,MECOM–EVI1(MDS および EVI1 複合蛋白 EVI1 [エコトロピックウイルス組込み部位 1],5 例),PRDM16(正制御ドメインジンクフィンガー蛋白 16,1 例)のいずれかが含まれた.複数の患者に血球減少が認められ,大部分に同一クローン内の複数遺伝子にベクターの挿入が認められた.7 例中 6 例には体細胞変異(KRASNRASWT1CDKN2A または CDKN2BRUNX1)も認められ,7 例中 1 例にはモノソミー7 が認められた.芽球増加を伴う MDS または単一血球系統の異形成を伴う MDS を発症し,同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けた 5 例中 4 例で MDS が認められない状態が持続し,大脳型副腎白質ジストロフィー症状の再発もみられなかった.1 例は HSCT 後 20 ヵ月(eli-cel 投与後 49 ヵ月)の時点で,おそらく移植片対宿主病で死亡した.AML の 1 例は生存しており,HSCT 後に完全ドナーキメリズムが認められた.MDS と最近診断された 1 例は生存しており,HSCT 待機中である.

結 論

eli-cel 投与を受けた患者のサブグループに造血器腫瘍が発生した.これらの症例は,クローンの癌遺伝子内のベクター挿入,および体細胞遺伝子異常の獲得を伴うクローン進化と関連している.(ブルーバード バイオ社から研究助成を受けた.ALD-102 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01896102,ALD-104 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03852498,LTF-304 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02698579)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2024; 391 : 1287 - 301. )