The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

October 31, 2024 Vol. 391 No. 17

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

PIK3CA 変異陽性進行乳癌に対するイナボリシブベースの治療
Inavolisib-Based Therapy in PIK3CA-Mutated Advanced Breast Cancer

N.C. Turner and Others

背景

イナボリシブ(inavolisib)は,ホスファチジルイノシトール 3-キナーゼ複合体の p110 触媒サブユニットのαアイソフォーム(PIK3CA がコードする)の非常に強力な選択的阻害薬であり,変異した p110αの分解も促進する.パルボシクリブ+フルベストラントとの併用で,非臨床モデルでは相乗的な活性を示し,初期臨床試験では有望な抗腫瘍活性を示している.

方 法

第 3 相二重盲検無作為化試験で,PIK3CA 変異陽性,ホルモン受容体陽性,ヒト上皮増殖因子受容体 2(HER2)陰性の局所進行または転移性乳癌を有し,術後補助内分泌療法中または術後補助内分泌療法終了後 12 ヵ月以内に再発した患者を対象に,一次治療としてイナボリシブ(9 mg を 1 日 1 回経口投与)とパルボシクリブ+フルベストラントを併用する群(イナボリシブ群)と,プラセボとパルボシクリブ+フルベストラントを併用する群(プラセボ群)とを比較した.主要評価項目は試験担当医師が評価した無増悪生存とした.

結 果

161 例がイナボリシブ群,164 例がプラセボ群に割り付けられ,追跡期間の中央値はそれぞれ 21.3 ヵ月と 21.5 ヵ月であった.無増悪生存期間の中央値はイナボリシブ群 15.0 ヵ月(95%信頼区間 [CI] 11.3~20.5),プラセボ群 7.3 ヵ月(95% CI 5.6~9.3)であった(病勢進行または死亡のハザード比 0.43,95% CI 0.32~0.59,P<0.001).客観的奏効割合は,イナボリシブ群 58.4%,プラセボ群 25.0%であった.グレード 3 または 4 の好中球減少症の発現率はイナボリシブ群 80.2%,プラセボ群 78.4%,グレード 3 または 4 の高血糖の発現率はそれぞれ 5.6%と 0%,グレード 3 または 4 の口内炎/粘膜炎の発現率は 5.6%と 0%,グレード 3 または 4 の下痢の発現率は 3.7%と 0%であった.グレード 3 または 4 の皮疹は報告されなかった.有害事象による試験薬中止の割合は,イナボリシブ群 6.8%,プラセボ群 0.6%であった.

結 論

PIK3CA 変異陽性,ホルモン受容体陽性,HER2 陰性の局所進行または転移性乳癌患者において,イナボリシブをパルボシクリブ+フルベストラントと併用した場合,プラセボとパルボシクリブ+フルベストラントを併用した場合と比較して,無増悪生存期間が有意に長く,毒性の発現率が高かった.有害事象により試験薬を中止した患者の割合は低かった.(エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社から研究助成を受けた.INAVO120 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04191499)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2024; 391 : 1584 - 96. )