October 31, 2024 Vol. 391 No. 17
PIK3CA 変異陽性進行乳癌に対するイナボリシブベースの治療
Inavolisib-Based Therapy in PIK3CA-Mutated Advanced Breast Cancer
N.C. Turner and Others
イナボリシブ(inavolisib)は,ホスファチジルイノシトール 3-キナーゼ複合体の p110 触媒サブユニットのαアイソフォーム(PIK3CA がコードする)の非常に強力な選択的阻害薬であり,変異した p110αの分解も促進する.パルボシクリブ+フルベストラントとの併用で,非臨床モデルでは相乗的な活性を示し,初期臨床試験では有望な抗腫瘍活性を示している.
第 3 相二重盲検無作為化試験で,PIK3CA 変異陽性,ホルモン受容体陽性,ヒト上皮増殖因子受容体 2(HER2)陰性の局所進行または転移性乳癌を有し,術後補助内分泌療法中または術後補助内分泌療法終了後 12 ヵ月以内に再発した患者を対象に,一次治療としてイナボリシブ(9 mg を 1 日 1 回経口投与)とパルボシクリブ+フルベストラントを併用する群(イナボリシブ群)と,プラセボとパルボシクリブ+フルベストラントを併用する群(プラセボ群)とを比較した.主要評価項目は試験担当医師が評価した無増悪生存とした.
161 例がイナボリシブ群,164 例がプラセボ群に割り付けられ,追跡期間の中央値はそれぞれ 21.3 ヵ月と 21.5 ヵ月であった.無増悪生存期間の中央値はイナボリシブ群 15.0 ヵ月(95%信頼区間 [CI] 11.3~20.5),プラセボ群 7.3 ヵ月(95% CI 5.6~9.3)であった(病勢進行または死亡のハザード比 0.43,95% CI 0.32~0.59,P<0.001).客観的奏効割合は,イナボリシブ群 58.4%,プラセボ群 25.0%であった.グレード 3 または 4 の好中球減少症の発現率はイナボリシブ群 80.2%,プラセボ群 78.4%,グレード 3 または 4 の高血糖の発現率はそれぞれ 5.6%と 0%,グレード 3 または 4 の口内炎/粘膜炎の発現率は 5.6%と 0%,グレード 3 または 4 の下痢の発現率は 3.7%と 0%であった.グレード 3 または 4 の皮疹は報告されなかった.有害事象による試験薬中止の割合は,イナボリシブ群 6.8%,プラセボ群 0.6%であった.
PIK3CA 変異陽性,ホルモン受容体陽性,HER2 陰性の局所進行または転移性乳癌患者において,イナボリシブをパルボシクリブ+フルベストラントと併用した場合,プラセボとパルボシクリブ+フルベストラントを併用した場合と比較して,無増悪生存期間が有意に長く,毒性の発現率が高かった.有害事象により試験薬を中止した患者の割合は低かった.(エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社から研究助成を受けた.INAVO120 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04191499)