遺伝性血管性浮腫におけるドニダロルセンの有効性と安全性
Efficacy and Safety of Donidalorsen for Hereditary Angioedema
M.A. Riedl and Others
遺伝性血管性浮腫は,発作性の,生命を脅かす可能性のある腫脹を特徴とするまれな疾患であり,カリクレイン・キニン系の制御異常によって引き起こされる.長期の予防的投薬により,カリクレイン・キニン系を安定化させられる可能性がある.アンチセンスオリゴヌクレオチドであるドニダロルセン(donidalorsen)は,プレカリクレインの発現を特異的に減少させる.
第 3 相二重盲検無作為化試験で,遺伝性血管性浮腫患者を,ドニダロルセン(80 mg 皮下)を 4 週ごとに投与する群,8 週ごとに投与する群,プラセボを投与する群に割り付けた.主要エンドポイントは,1 週目~25 週目における,試験責任医師が確認した遺伝性血管性浮腫発作の,時間で標準化した 4 週あたりの回数(発作発生率)とした.
計 90 例が,ドニダロルセンの 4 週ごと投与(45 例),8 週ごと投与(23 例),プラセボ投与(22 例)を受けた.時間で標準化した発作発生率の最小二乗平均値は,4 週群 0.44(95%信頼区間 [CI] 0.27~0.73),8 週群 1.02(95% CI 0.65~1.59),プラセボ群 2.26(95% CI 1.66~3.09)であった.1 週目~25 週目の発作発生率の平均は,4 週群がプラセボ群よりも 81%(95% CI 65~89)低く(P<0.001),8 週群がプラセボ群よりも 55%(95% CI 22~74)低かった(P=0.004).ベースラインからの発作発生率の低下の中央値は,4 週群 90%,8 週群 83%,プラセボ群 16%であった.5 週目~25 週目の発作発生率の平均は,4 週群がプラセボ群よりも 87%(95% CI 72~94)低く(P<0.001),8 週群がプラセボ群よりも 60%(95% CI 25~79)低かった.ドニダロルセンの 4 週ごと投与では,25 週目の血管性浮腫 QOL 質問票(AE-QoL;スコアの範囲は 0~100 で,100 は最低の QOL を示す)の総スコアの最小二乗平均値がベースラインから改善し,プラセボとの差は 18.6 ポイント(95% CI 9.5~27.7)であった(P<0.001).とくに頻度の高かった有害事象は,注射部位の発赤,頭痛,鼻咽頭炎であり,有害事象の 98%は軽症または中等症であった.
ドニダロルセン投与により遺伝性血管性浮腫の発作発生率が低下した.この知見は,ドニダロルセンを遺伝性血管性浮腫の予防に使用できる可能性を支持している.(アイオニス ファーマシューティカルズ社から研究助成を受けた.OASIS-HAE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT05139810)