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December 19, 2024 Vol. 391 No. 24

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コンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病集団発生への対応としての rVSV-ZEBOV-GP の包囲接種
Ebola Outbreak Response in the DRC with rVSV-ZEBOV-GP Ring Vaccination

J.-J. Muyembe and Others

背景

コンゴ民主共和国(DRC)東部で 2018~20 年にエボラウイルス病(EVD)集団発生が始まった際,認可されているワクチンはなかった.しかし,2015 年にギニアで行われたクラスター無作為化試験では,新規症例の周囲に生複製 rVSV-ZEBOV-GP ワクチンを単回接種する包囲接種(ring vaccination:接触者,および接触者の接触者を標的とする接種)によって,接種後 10 日から EVD の発症率が減少することを示すエビデンスが得られていた.そこで,DRC 東部での集団発生に対する標準的な制御対策に,包囲接種が追加された.

方 法

ワクチン接種後 9 日以内(患者隔離や包囲接種による防御がほとんど期待できない期間),10~29 日目,30 日目以降について,EVD 発症率を評価した.発端患者における症状出現後 21 日以内に,新規症例/クラスターを取り囲む「リング」1,853 個を確認し,リングのメンバーにワクチン接種を提案した.2020 年中頃の集団発生終了時まで,ワクチン接種者の EVD 発症をモニタリングした.

結 果

2018 年 8 月 8 日~2020 年 1 月 14 日に,265,183 人にワクチンを接種した.このうち 102,515 人に,0,3,21 日目に安全性のモニタリングが行われた.接触者,および接触者の接触者のうち,EVD は 434 例で診断され(リングあたり 0.2),そのほとんどはワクチン接種後 0~9 日以内(380 例),または 10~29 日以内(32 例)であった.さらに 22 例が,30 日目以降,平均 170 日の追跡期間中に EVD と診断された.発端患者の EVD 発症後,制御対策(包囲接種を含む)の開始が早いほど,接触者の EVD 発症率は早く低下した.各サブグループにおける EVD 発症率は,10 日目前後に急激に低下した.10 日目に発症していなかった接触者,および接触者の接触者における 10~29 日目の EVD 発症率は,1,000 人あたり 0.16 例(194,019 人中 32 例)であった.この発症率は,同様に定義されたギニアのリングのメンバーにおける 1,000 人あたり 4.64 例(4,528 人中 21 例)よりもはるかに低いが(発症率比 0.04,95%信頼区間 0.02~0.06),ギニアでは標準的な対策はただちに開始されたものの,ワクチン接種はリング形成後 21 日まで遅延した.ワクチンの安全性に懸念は認められなかった.

結 論

DRC 東部における EVD に対する標準的な制御対策+包囲接種に関する非無作為化試験のエビデンスは,ワクチン接種後 10 日以降の EVD 発症に対するワクチンの有効性について,ギニアで行われた無作為化試験の既存のエビデンスを補強するものである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2024; 391 : 2327 - 36. )