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September 19, 2024 Vol. 391 No. 11

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オピオイド過量服用死を減らすための地域ベースのクラスター無作為化試験
Community-Based Cluster-Randomized Trial to Reduce Opioid Overdose Deaths

The HEALing Communities Study Consortium

背景

オピオイド関連過量服用死を減らすためのエビデンスに基づく実践には,過量服用に関する教育,ナロキソンの配布,オピオイド使用障害を治療するための薬剤の使用,処方オピオイドの安全対策などがある.これらの実践を積極的に取り入れることでオピオイド関連過量服用死を減らそうとする,地域参加型介入の有効性に関するデータが必要である.

方 法

地域レベルのクラスター無作為化試験で,ケンタッキー州,マサチューセッツ州,ニューヨーク州,オハイオ州の 67 地域を,介入を行う群(34 地域)と待機する対照群(33 地域)に,州で層別化して無作為に割り付けた.この試験は,新型コロナウイルス感染症(Covid-19)パンデミックと,フェンタニル関連過量服用死亡数の全国的な急増という 2 つの背景のもとで行った.各州内で,都市部/農村部の分類,過去の過量服用率,地域の人口は,介入群と対照群とで均衡がとれていた.主要転帰は,地域の成人におけるオピオイド関連過量服用死亡数とした.

結 果

2021 年 7 月~2022 年 6 月の比較期間において,人口で平均化したオピオイド関連過量服用死亡率は,介入群と対照群とで同程度であり(100,000 人あたり 47.2 件 対 100,000 人あたり 51.7 件),補正率比は 0.91(95%信頼区間 0.76~1.09,P=0.30)であった.オピオイド関連過量服用死亡率に対する介入の効果に,州別,都市部/農村部の分類別,年齢別,性別,人種・民族集団別で大きな差はなかった.介入群の地域では,地域が選択したエビデンスに基づく実践 806 策のうち,615 策(過量服用に関する教育とナロキソンの配布に関する 254 策,オピオイド使用障害に対する薬剤の使用に関する 256 策,処方オピオイドの安全対策に関する 105 策)が実行された.実行されたエビデンスに基づく実践のうち,比較期間前に開始されたのは 235 策(38%)のみであった.

結 論

オピオイド過量服用死を減らすためのエビデンスに基づく実践の展開に,地域連携などの複数のモダリティを用いた 12 ヵ月間の介入試験において,Covid-19 パンデミックとフェンタニル関連過量服用の蔓延という 2 つの背景のもとでは,死亡率は介入群と対照群とで同程度であった.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.HCS 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04111939)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2024; 391 : 989 - 1001. )