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March 13, 2025 Vol. 392 No. 11

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脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血に対する非制限的輸血戦略と制限的輸血戦略との比較
Liberal or Restrictive Transfusion Strategy in Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage

S.W. English and Others

背景

脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血後の集中治療中の患者に,赤血球の非制限的輸血戦略を用いた場合の効果が,制限的輸血戦略と比較してどうかは明らかにされていない.

方 法

脳動脈瘤破裂による急性くも膜下出血と貧血を有する重症成人を,非制限的戦略(ヘモグロビン値 10 g/dL 以下で輸血必須)と,制限的戦略(ヘモグロビン値 8 g/dL 以下で輸血を選択できる)に無作為に割り付けた.主要転帰は 12 ヵ月の時点での神経学的転帰不良とし,修正ランキンスケール(0~6 で,値が高いほど障害が重度であることを示す)のスコアが 4 以上と定義した.副次的転帰は,12 ヵ月の時点での,機能的自立度評価法(FIM;スコア範囲 18~126)で評価した機能的自立度と,EuroQol 5 領域 5 段階質問票(EQ-5D-5L)の効用指数(スコア範囲 -0.1~0.95)やビジュアルアナログスケール(VAS;スコア範囲 0~100)で評価した QOL などとした(各評価のスコアは,値が高いほど健康状態または QOL が良好であることを示す).

結 果

23 施設で 742 例が無作為化された.12 ヵ月の時点での主要転帰の解析対象は,725 例(97.7%)であった.神経学的転帰不良となったのは,非制限的戦略群では 364 例中 122 例(33.5%),制限的戦略群では 361 例中 136 例(37.7%)であった(リスク比 0.88,95%信頼区間 [CI] 0.72~1.09,P=0.22).FIM スコアの平均(±SD)は,非制限的戦略群で 82.8±54.6,制限的戦略群で 79.8±54.5 であった(平均差 3.01,95% CI -5.49~11.51).EQ-5D-5L 効用指数スコアの平均は,両群とも 0.5±0.4 であった(平均差 0.02,95% CI -0.04~0.09).VAS スコアの平均は,非制限的戦略群で 52.1±37.5,制限的戦略群で 50±37.1 であった(平均差 2.08,95% CI -3.76~7.93).有害事象の発現率は 2 群で同程度であった.

結 論

脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血と貧血を有する患者において,非制限的輸血戦略を用いた場合,制限的輸血戦略を用いた場合と比較して,12 ヵ月の時点での神経学的転帰不良のリスクは低くならなかった.(カナダ保健研究機構ほかから研究助成を受けた.SAHARA 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03309579)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 392 : 1079 - 88. )