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March 13, 2025 Vol. 392 No. 11

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南インド農村部におけるツツガムシ病の発生率
Incidence of Scrub Typhus in Rural South India

C. Devamani and Others

背景

ツツガムシ病が風土病であるアジアの地域では,重度の不明熱の主な原因がこの疾患であることが病院ベースの研究から示唆されている.しかし,感染および病態の人口ベースの発生率はほとんど検討されていない.

方 法

ツツガムシ病の疫学的特徴と臨床的特徴を評価するため,この疾患が蔓延しているインドのタミル・ナードゥ州の 37 の村で,人口ベースのコホート研究を行った.研究の参加者の訪問を,6~8 週ごとに 2 年間行った.直近の訪問後に発熱のあった参加者から静脈血検体を入手した.参加者のサブコホートから採血を行い,血清学的に確認されたツツガムシ病リケッチア(Orientia tsutsugamushi)感染の発生率を推定した.

結 果

7,619 世帯 32,279 人の急性発熱性疾患を系統的に評価した.54,588 人年の追跡期間中に,6,175 件の発熱が観察された.血液検体は 4,474 件(72.5%)から得られ,このうち 328 件(7.3%)が,ツツガムシ病の臨床症例の定義(酵素免疫測定法 [ELISA] によるツツガムシ病リケッチアに対する IgM の検出,または PCR 検査によるツツガムシ病リケッチアの検出)を満たした.臨床的感染の発生率は,1,000 人年あたり 6.0 例(95%信頼区間 [CI] 4.8~7.5)であった.臨床症例の 71 例(21.6%)が入院にいたった(発生率 1,000 人年あたり 1.3 件,95% CI 1.0~1.7).臨床症例の 29 例(8.8%)は,臓器不全や有害な妊娠転帰などにいたる重症であった(発生率 1,000 人年あたり 0.5 例,95% CI 0.4~0.8).研究(1 年単位)の開始時と終了時に検体を提供したサブコホートの 2,128 人では,症状の有無とは独立に,セロコンバージョンの発生率は 1,000 人年あたり 81.2 件(95% CI 70.8~91.6)であった.臨床的感染の発生率は,年齢が高い群のほうが低い群よりも高く,女性のほうが男性よりも高かった.対照的に,年齢を補正した重症感染の発生率は,男性と女性とで同程度であった.研究の開始時に評価した 5,602 人では,ELISA による IgG の血清有病率が 42.8%(95% CI 35.8~50.2)であった.1 年目または 2 年目の開始時に血清 IgG が陽性であることは,その後の 1 年間の臨床的病態を予防しなかったが,血清 IgG が陰性であった場合よりも,疾患の重症度が低いことと関連した.

結 論

ツツガムシ病が風土病であるアジアの地域での,無症状感染の発生率をはじめとする,ツツガムシ病の負荷を記述した.(英国医療研究評議会から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04506944)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 392 : 1089 - 99. )