March 27, 2025 Vol. 392 No. 12
IgG4 関連疾患の治療に用いるイネビリズマブ
Inebilizumab for Treatment of IgG4-Related Disease
J.H. Stone and Others
IgG4 関連疾患は,再発性,線維炎症性,免疫介在性の多臓器疾患であり,承認されている治療法はない.イネビリズマブは,CD19 陽性 B 細胞を標的として枯渇させることから,IgG4 関連疾患患者の治療に有効であるかもしれない.
第 3 相多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行い,活動性 IgG4 関連疾患の成人を, 52 週の治療期間中,イネビリズマブ(300 mg を 1 日目,15 日目,26 週目に点滴静注)を投与する群と,プラセボを投与する群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.グルココルチコイドの漸減を両群の参加者に同じ方法で行った.再燃時にはグルココルチコイドの使用を可能としたが,基礎治療としての免疫抑制薬の使用は許可しなかった.主要評価項目は,治療期間中に最初に治療が行われ,判定委員会によって判定された疾患再燃とし,生存時間(time-to-event)解析で評価した.年間再燃率,無治療完全寛解,グルココルチコイドフリー完全寛解を,重要な副次的評価項目とした.
IgG4 関連疾患患者 135 例が無作為化され,68 例がイネビリズマブ群,67 例がプラセボ群に割り付けられた.イネビリズマブ投与により再燃リスクは低下し,イネビリズマブ群では 7 例(10%)で再燃が 1 回以上認められたのに対し,プラセボ群では 40 例(60%)であった(ハザード比 0.13,95%信頼区間 [CI] 0.06~0.28,P<0.001).年間再燃率は,イネビリズマブ群のほうがプラセボ群よりも低かった(率比 0.14,95% CI 0.06~0.31,P<0.001).イネビリズマブ群では,プラセボ群と比較して,再燃のない無治療完全寛解が得られた参加者が多く(オッズ比 4.68,95% CI 2.21~9.91,P<0.001),再燃のないグルココルチコイドフリー完全寛解が得られた参加者も多かった(オッズ比 4.96,95% CI 2.34~10.52,P<0.001).治療期間中,重篤な有害事象は,イネビリズマブの投与を受けた12 例(18%)と,プラセボの投与を受けた 6 例(9%)に発現した.
イネビリズマブは,1 年の時点で,IgG4 関連疾患の再燃リスクを低下させ,再燃のない完全寛解が得られる可能性を高めた.このことから,CD19 を標的とする B 細胞枯渇薬の,IgG4 関連疾患の治療薬候補としての役割が確認された.(アムジェン社から研究助成を受けた.MITIGATE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04540497)