April 17, 2025 Vol. 392 No. 15
コンゴ民主共和国におけるクレード I 型エムポックスウイルス感染に対するテコビリマト
Tecovirimat for Clade I MPXV Infection in the Democratic Republic of Congo
The PALM007 Writing Group
テコビリマトは,動物での有効性研究と健康なヒトでの安全性評価の結果に基づき,欧米ではエムポックス(以前は「サル痘」として知られていた)の治療に使用することができる.エムポックス患者における安全性と有効性について,無作為化比較試験のエビデンスは少ない.
コンゴ民主共和国(DRC)で,エムポックス患者を対象に,テコビリマトの二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行った.エムポックスの皮膚病変を 1 個以上有し,PCR 法でクレード I 型エムポックスウイルス(MPXV)陽性であった患者を,テコビリマトを投与する群と,プラセボを投与する群に 1:1 の割合で割り付けた.全例が支持療法を受けた.主要評価項目はエムポックス病変の消失とし,無作為化から病変消失までの日数として評価した.安全性も評価した.
2022 年 10 月 7 日~2024 年 7 月 9 日に,597 例が無作為化され,295 例がテコビリマト群,302 例がプラセボ群に割り付けられた.無作為化から病変消失までの期間の中央値は,テコビリマト群で 7 日,プラセボ群で 8 日であり,競合リスクを考慮した病変消失のハザード比は 1.13(95%信頼区間 [CI] 0.97~1.31,P=0.14)であった.試験レジメンの開始が症状発現後 7 日以内の場合でも(競合リスクを考慮したハザード比 1.16,95% CI 0.98~1.37),症状発現後 7 日を過ぎている場合でも(競合リスクを考慮したハザード比 1.00,95% CI 0.71~1.40),結果は同様であった.全死亡率は 1.7%で,2023 年に DRC で報告された致死率 4.6%よりも低かった.14 日の時点で,血液検体,病変部検体,口腔咽頭検体が PCR 法で MPXV 陰性となった患者の割合は,2 群で同程度であった.有害事象はテコビリマト群の 72.9%とプラセボ群の 70.5%に発現し,重篤な有害事象はそれぞれ 5.1%と 5.0%で報告された.
クレード I 型 MPXV によるエムポックス患者にテコビリマトを投与しても,病変消失までの日数は減少しなかった.安全性に関する懸念は認められなかった.(米国国立アレルギー・感染症研究所ほかから研究助成を受けた.PALM007 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT05559099)