January 9, 2025 Vol. 392 No. 2
骨髄線維症に対する移植後のドライバー遺伝子変異のクリアランス
Clearance of Driver Mutations after Transplantation for Myelofibrosis
N. Gagelmann and Others
骨髄線維症では,同種造血幹細胞移植が治癒を望める唯一の治療法である.ドライバー遺伝子変異は骨髄線維症の病態生理学的特徴であるが,移植後の変異遺伝子クリアランスの役割は明らかでない.
骨髄線維症を有し,強度減弱前処置による移植が予定されていた患者 324 例(73%が JAK2 変異,23%が CALR 変異,4%が MPL 変異を保有)の末梢血検体におけるドライバー遺伝子変異の動態を,高感度 PCR 法を用いて分析した.移植前,移植後 30 日,100 日,180 日に変異の検出を行い,クリアランスと,その再発および治癒に対する効果を評価した.主要評価項目は再発と無病生存の 2 つとした.
移植後 30 日の時点で,変異遺伝子クリアランスは JAK2 変異患者では 42%,CALR 変異患者では 73%,MPL 変異患者では 54%に認められ,100 日の時点ではそれぞれ 63%,82%,100%に認められた.1 年の時点での再発の累積発生率は,移植後 30 日の時点で変異遺伝子クリアランスが認められた患者では 6%(95%信頼区間 [CI] 2~10),変異遺伝子クリアランスが認められなかった患者では 21%(95% CI 15~27)であった.6 年の時点での無病生存率と全生存率は,移植後 30 日の時点で変異遺伝子クリアランスが認められた患者では 61%と 74%であり,変異遺伝子クリアランスが認められなかった患者では 41%と 60%であった.30 日の時点での変異遺伝子クリアランスは,効果の指標として従来のドナーキメリズムよりも優れ,再発・進行リスクが低いことと独立に関連し(ハザード比 0.36,95% CI 0.21~0.61),ドライバー遺伝子変異の種類(JAK2 対 MPL/CALR)による予後の違いの影響を受けないと思われた.
骨髄線維症患者では,移植後 30 日の時点でのドライバー遺伝子変異のクリアランスは,保有するドライバー遺伝子変異の種類にかかわらず,再発と生存に影響を及ぼすと思われた.