再発性多発性硬化症に対するトレブルチニブとテリフルノミドとの比較
Tolebrutinib versus Teriflunomide in Relapsing Multiple Sclerosis
J. Oh and Others
トレブルチニブ(tolebrutinib)は,血液脳関門通過性と生物活性のある経口ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬であり,末梢炎症と,中枢神経系内の疾患関連ミクログリアや B 細胞などの免疫細胞の持続的な活性化を調節する.再発性多発性硬化症の治療におけるトレブルチニブの有効性と安全性について,さらなるデータが必要である.
2 件の第 3 相二重盲検ダブルダミーイベント主導型試験(GEMINI 1 試験,GEMINI 2 試験)で,再発性多発性硬化症の参加者を,トレブルチニブ(60 mg,1 日 1 回)と,テリフルノミドにマッチさせたプラセボを投与する群と,テリフルノミド(teriflunomide;14 mg,1 日 1 回)と,トレブルチニブにマッチさせたプラセボを投与する群に,1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要評価項目は年間再発率とした.6 ヵ月以上持続する確定された障害悪化を重要な副次的評価項目とし,2 試験を統合して生存時間(time-to-event)解析で評価した.
974 例が GEMINI 1 試験,899 例が GEMINI 2 試験に組み入れられた.追跡期間中央値は 139 週であった.年間再発率は,GEMINI 1 試験ではトレブルチニブ群で 0.13,テリフルノミド群で 0.12 であり(率比 1.06,95%信頼区間 [CI] 0.81~1.39,P=0.67),GEMINI 2 試験ではそれぞれ 0.11,0.11 であった(率比 1.00,95% CI 0.75~1.32,P=0.98).6 ヵ月以上持続する障害悪化が確定された参加者の割合は,トレブルチニブ統合群で 8.3%,テリフルノミド統合群で 11.3%であった(ハザード比 0.71;95% CI 0.53~0.95;事前に規定した階層的検定計画に基づき,正式な仮説検定は行わず,信頼区間の幅は多重検定で補正しなかった).有害事象の発現割合は 2 群で同程度であったが,小出血の発現割合は,トレブルチニブ群のほうがテリフルノミド群よりも高かった(点状出血 4.5% 対 0.3%,重度の月経 2.6% 対 1.0%).
再発性多発性硬化症の参加者において,トレブルチニブは,年間再発率の低下に関して,テリフルノミドに対する優越性を示さなかった.(サノフィ社から研究助成を受けた.GEMINI 1 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04410978,GEMINI 2 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04410991)