January 16, 2025 Vol. 392 No. 3
西アフリカ人における APOL1 の両アレル性・片アレル性バリアントと慢性腎臓病
APOL1 Bi- and Monoallelic Variants and Chronic Kidney Disease in West Africans
R.A. Gbadegesin and Others
アポリポ蛋白 L1 遺伝子(APOL1)のバリアントは,アフリカ系アメリカ人における慢性腎臓病(CKD)の危険因子である.黒人人口の主要集団である西アフリカ人における,CKD の遺伝疫学に関するデータや,APOL1 バリアントと CKD との臨床的関連に関するデータは少ない.
ガーナとナイジェリアで,ステージ 2~5 の CKD の参加者,生検で診断された糸球体疾患の参加者,腎疾患を有しない参加者を対象に,症例対照研究を行った.高リスク遺伝子型(APOL1 リスクアレルが 2 つ)の参加者と,低リスク遺伝子型(APOL1 リスクアレルが 1 つ,またはリスクアレルを保有しない)の参加者における CKD と APOL1 バリアントとの関連を,臨床施設,年齢,性別などの共変量で補正したロジスティック回帰モデルを当てはめて解析した.
8,355 例(ステージ 2~5 の CKD 患者 4,712 例,糸球体疾患患者 866 例,腎疾患を有しない対照 2,777 例)において,片アレル性 APOL1 バリアント保有率は 43.0%であり,両アレル性 APOL1 バリアント保有率は 29.7%であった.APOL1 リスクアレルが 2 つの参加者は,リスクアレルが 1 つまたは保有しない参加者よりも,CKD のオッズが高く(補正オッズ比 1.25,95%信頼区間 [CI] 1.11~1.40),巣状分節性糸球体硬化症のオッズも高かった(補正オッズ比 1.84,95% CI 1.30~2.61).APOL1 リスクアレルが 1 つの参加者は,リスクアレルを保有しない参加者よりも,CKD のオッズが高く(補正オッズ比 1.18,95% CI 1.04~1.33),巣状分節性糸球体硬化症のオッズも高かった(補正オッズ比 1.61,95% CI 1.04~2.48).共変量を含めても,片アレル性・両アレル性 APOL1 バリアントと,CKD または巣状分節性糸球体硬化症との関連は修飾されなかった.
この研究で,片アレル性 APOL1 バリアントは,CKD のオッズが 18%高く,巣状分節性糸球体硬化症のオッズが 61%高いことと関連し,両アレル性 APOL1 バリアントは,CKD のオッズが 25%高く,巣状分節性糸球体硬化症のオッズが 84%高いことと関連した.(米国国立ヒトゲノム研究所ほかから研究助成を受けた.)