治療歴のある HER2 変異陽性非小細胞肺癌に対するゾンゲルチニブ
Zongertinib in Previously Treated HER2-Mutant Non–Small-Cell Lung Cancer
J.V. Heymach and Others
ヒト上皮増殖因子受容体 2(HER2)変異陽性の非小細胞肺癌(NSCLC)患者には,革新的な経口標的療法が必要である.ゾンゲルチニブ(zongertinib)は,経口投与可能な不可逆的 HER2 選択的チロシンキナーゼ阻害薬であり,第 1 相試験では,HER2 異常を有する進行または転移性の固形腫瘍患者に対して有効性を示している.
進行または転移性の HER2 変異陽性 NSCLC 患者を対象とした複数コホート第 1a・1b 相試験で,ゾンゲルチニブを評価した.今回は,治療歴のある患者に対するゾンゲルチニブの主要解析について報告する.解析対象は,チロシンキナーゼドメイン変異陽性腫瘍を有する患者(コホート 1),HER2 標的抗体薬物複合体による治療歴のある,チロシンキナーゼドメイン変異陽性腫瘍を有する患者(コホート 5),非チロシンキナーゼドメイン変異陽性腫瘍を有する患者(コホート 3)であった.最初に,コホート 1 では,患者をゾンゲルチニブ 120 mg を 1 日 1 回投与する群と,240 mg を 1 日 1 回投与する群に無作為に割り付けた.コホート 5 とコホート 3 では,患者に 240 mg/日を投与した.コホート 1 のデータの中間解析後,その後登録された全コホートの患者には,120 mg を投与した.主要評価項目は,盲検下独立中央判定(コホート 1,コホート 5)または試験担当医師の判定(コホート 3)による客観的奏効とした.奏効期間,無増悪生存期間などを副次的評価項目とした.
コホート 1 では,75 例がゾンゲルチニブ 120 mg の投与を受けた.データカットオフ時点(2024 年 11 月 29 日)で,客観的奏効は 71%(95%信頼区間 [CI] 60~80,30%以下の基準値に対する P<0.001)で確認され,奏効期間の中央値は 14.1 ヵ月(95% CI 6.9~評価不能),無増悪生存期間の中央値は 12.4 ヵ月(95% CI 8.2~評価不能)であった.グレード 3 以上の薬剤関連有害事象は 13 例(17%)に発現した.コホート 5(31 例)では,客観的奏効は 48%(95% CI 32~65)で確認された.グレード 3 以上の薬剤関連有害事象は 1 例(3%)に発現した.コホート 3(20 例)では,客観的奏効は 30%(95% CI 15~52)で確認された.グレード 3 以上の薬剤関連有害事象は 5 例(25%)に発現した.3 コホートのいずれにおいても,薬剤性間質性肺疾患の症例は認められなかった.
治療歴のある HER2 変異陽性 NSCLC 患者において,ゾンゲルチニブは臨床的利益を示し,有害事象は主に低グレードであった.(ベーリンガーインゲルハイム社から研究助成を受けた.Beamion LUNG-1 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04886804)