January 2, 2025 Vol. 392 No. 1
心筋症を伴うトランスサイレチン型アミロイドーシス患者に対するブトリシラン
Vutrisiran in Patients with Transthyretin Amyloidosis with Cardiomyopathy
M. Fontana and Others
心筋症を伴うトランスサイレチン型アミロイドーシス(ATTR-CM)は,進行性の致死的疾患である.ブトリシランは,皮下投与する RNA 干渉治療薬であり,肝臓におけるトランスサイレチン産生を阻害する.
二重盲検無作為化試験で,ATTR-CM 患者を,ブトリシラン(25 mg)群と,プラセボ群に 1:1 の割合で割り付け,12 週ごとに最長 36 ヵ月間投与した.主要評価項目は,全死因死亡と心血管イベント再発の複合とした.副次的評価項目は,全死因死亡,6 分間歩行試験の歩行距離のベースラインからの変化量,カンザスシティ心筋症質問票の全体サマリー(KCCQ-OS)スコアのベースラインからの変化量などとした.有効性評価項目は,集団全体と単剤療法集団(ベースライン時にタファミジスの投与を受けていなかった患者)において評価し,階層的に検定した.
655 例が無作為化され,326 例がブトリシラン群,329 例がプラセボ群に割り付けられた.ブトリシランを投与した患者では,プラセボを投与した患者よりも全死因死亡および心血管イベント再発のリスクが低く(集団全体のハザード比 0.72,95%信頼区間 [CI] 0.56~0.93,P=0.01;単剤療法集団のハザード比 0.67,95% CI 0.49~0.93,P=0.02),42 ヵ月までの全死因死亡リスクが低かった(集団全体のハザード比 0.65,95% CI 0.46~0.90,P=0.01).集団全体で,主要評価項目イベントが 1 件以上発生した患者はブトリシラン群 125 例,プラセボ群 159 例であった.集団全体で,ブトリシランの投与によって,プラセボ投与よりも 6 分間歩行距離の低下は小さくなり( 最小二乗平均差 26.5 m,95% CI 13.4~39.6,P<0.001),KCCQ-OS スコアの低下は小さくなった(最小二乗平均差 5.8 ポイント,95% CI 2.4~9.2,P<0.001).単剤療法集団においても同様の利益が認められた.有害事象の発現率は 2 群で同程度であり(ブトリシラン群 99%,プラセボ群 98%),重篤な有害事象はブトリシラン群の 62%とプラセボ群の 67%に発現した.
ATTR-CM 患者のうち,ブトリシランを投与した患者では,プラセボを投与した患者よりも全死因死亡および心血管イベントのリスクが低く,運動耐容能と QOL が維持された.(アルナイラム ファーマシューティカルズ社から研究助成を受けた.HELIOS-B 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04153149)