February 13, 2025 Vol. 392 No. 7
急性心筋梗塞に対するスピロノラクトンのルーチン投与
Routine Spironolactone in Acute Myocardial Infarction
S.S. Jolly and Others
ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は,うっ血性心不全を合併した心筋梗塞後の患者の死亡率を低下させることが示されている.心筋梗塞後に,スピロノラクトンをルーチンに使用することが有益であるかは明らかでない.
2×2 要因デザインを用いた多施設共同試験を行い,経皮的冠動脈インターベンションを受けた心筋梗塞患者を,スピロノラクトンまたはプラセボの投与と,コルヒチンまたはプラセボの投与に無作為に割り付けた.本稿では,スピロノラクトンに関する試験結果を報告する.主要転帰は 2 つで,1 つ目は,心血管系の原因による死亡と,心不全の新規発症または悪化の複合とし,総イベント数として評価した.2 つ目は,心筋梗塞,脳卒中,心不全の新規発症または悪化,心血管系の原因による死亡の複合項目のいずれかの最初の発生とした.安全性も評価した.
14 ヵ国 104 施設で 7,062 例が登録され,3,537 例がスピロノラクトンの投与,3,525 例がプラセボの投与に割り付けられた.解析の時点で,45 例(0.6%)の生存状態が不明であった.中央値で 3 年の追跡期間中,1 つ目の主要転帰イベントは,スピロノラクトン群では 183 件(100 患者年あたり 1.7 件)発生したのに対し,プラセボ群では 220 件(100 患者年あたり 2.1 件)発生した(心血管系以外の原因による死亡の競合リスクで補正したハザード比 0.91,95%信頼区間 [CI] 0.69~1.21,P=0.51).2 つ目の主要転帰イベントは,スピロノラクトン群の 3,537 例中 280 例(7.9%)と,プラセボ群の 3,525 例中 294 例(8.3%)に発生した(競合リスクで補正したハザード比 0.96,95% CI 0.81~1.13,P=0.60).重篤な有害事象は,スピロノラクトン群の 255 例(7.2%)とプラセボ群の 241 例(6.8%)で報告された.
心筋梗塞患者にスピロノラクトンを投与しても,心血管系の原因による死亡と,心不全の新規発症または悪化の発生率,および心血管系の原因による死亡,心筋梗塞,脳卒中,心不全の新規発症または悪化の複合の発生率は低くならなかった.(カナダ保健研究機構ほかから研究助成を受けた.CLEAR 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03048825)