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February 27, 2025 Vol. 392 No. 9

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慢性硬膜下血腫に対する中硬膜動脈塞栓術
Embolization of the Middle Meningeal Artery for Chronic Subdural Hematoma

D. Fiorella and Others

背景

慢性硬膜下血腫に対して,標準治療を受ける患者は治療失敗のリスクが高い.この集団における,補助的に行う中硬膜動脈塞栓術の治療失敗のリスクに対する効果は明らかにされていない.

方 法

有症状の慢性硬膜下血腫患者を,標準治療の補助として中硬膜動脈塞栓術を行う群(塞栓術群)と,標準治療のみを行う群(対照群)に無作為に割り付けた.無作為化前に,患者ごとに外科的標準治療と非外科的標準治療のいずれかが選択された.主要有効性転帰は,180 日の時点での慢性硬膜下血腫(10 mm 超)の再発または残存;180 日以内の再手術または外科的レスキュー処置;180 日以内の障害をもたらす重大な脳卒中,心筋梗塞,神経系の原因による死亡の複合とした.主要安全性転帰は,30 日以内の障害をもたらす重大な脳卒中または全死因死亡の複合とした.

結 果

登録された 310 例のうち,149 例が塞栓術群,161 例が対照群に無作為に割り付けられた.189 例が外科的標準治療,121 例が非外科的標準治療を受ける予定であった.平均年齢は 73 歳で,70%が男性であった.主要有効性解析では,主要転帰イベントは,塞栓術群では 120 例中 19 例(16%)に発生したのに対し,対照群では 129 例中 47 例(36%)に発生した(オッズ比 0.36,95%信頼区間 0.20~0.66,P=0.001).主要安全性解析では,30 日以内の障害をもたらす重大な脳卒中または死亡は,塞栓術群では 144 例中 4 例(3%),対照群では 166 例中 5 例(3%)に発生した.180 日の時点で,塞栓術群の 12 例(8%)と対照群の 9 例(5%)が死亡しており,神経系の原因による死亡は,塞栓術群の 1 例(1%)と対照群の 3 例(2%)に発生していた.

結 論

有症状の慢性硬膜下血腫患者において,標準治療の補助として中硬膜動脈塞栓術を行った場合,標準治療のみを行った場合と比較して治療失敗のリスクは低くなり,障害を伴う脳卒中または死亡の発生率が高くなることはこの短期間ではなかった.より長期の安全性転帰を検討するための,さらなる試験が必要である.(バルト USA 社から研究助成を受けた.STEM 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04410146)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 392 : 855 - 64. )